北奥法律事務所

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地方の町弁の身内が亡くなるとき~香典を巡る雑感~

先日、県内の某先生の親御さんが亡くなられたとの知らせが弁護士会からありました。その先生からは2年前の私の父の死去時に香典をいただいていたこともあり、ささやかながら香典をお届けしました。

ただ、私の場合、香典はすべて喪主である兄に渡したので「いただいたものをお返しする」という関係はあまり成り立っていません。さすがに兄に「私の関係で頂戴した香典は返せ」などと文句を言うわけにもいかず、ケチで貧乏な身の上には多少のトホホ感もないわけではありません。

反面、気楽な次男だからこんなことを言えるのだということも、私の実家のような「古い家」では、また真実なのでしょうが・・。

ちなみに、地方ではお身内が亡くなると岩手日報などに死亡広告を載せる方が多いと思いますが、岩手弁護士会の場合、会員(弁護士)についてそうしたものが載ると、問答無用(本人に確認なし)で、全会員にFAXが流れるようです(なお、ご本人が亡くなられた場合は、東北では6県の弁護士全員にFAX送信しています)。

少なくとも、私の父が亡くなったときは、兄の判断で私の名前も新聞の死亡広告に載せたため、私が知らぬ間に流れた弁護士会の通知を通じて、多くの同業の皆様から香典をいただいたのですが、上記の事情(喪主でなく香典をいただく立場ではない)から、私の名前は見なかったことにしていただきたかった(せめて、FAXの前にご一報いただきたかった)というのが正直なところではあります。

もちろん、弁護士会にロクに顔を出さない窓際会員の私にも多くの方々から香典をいただいたこと自体は、大変ありがたく、他の関係でいただいた皆様も含め、今も恐縮しているところではあるのですが・・

個人的には、直にお世話になったリアルな人間関係のある方が亡くなられた場合には、葬儀に出席するなどしなければとは思うのですが、お身内の方の葬儀等については、喪主の方との仕事上など特別な関わりがない限り、互いに気遣いをしなくともよいのでは(そうした文化は、昔はともかく現代では廃れていってよいのでは)と思っています。

さらに言えば、葬儀に多額の費用を投じたり香典などというお金のやりとりをすること自体が、文化として止めてもよいのでは(そんなことに金を使っても、今をときめく?葬儀業者の皆さんが喜ぶだけで、主役というべき遺族関係者にとっては面倒が増えるだけなのでは)というのが、曲がりなりにも葬儀というものを経験した「すれっからしの合理主義者」の率直な本音ではあります。

さらに余計なこと?を言えば、ご収入の多くないご年配の方で、冠婚葬祭の負担が多くて家計がおかしくなったという債務整理絡みのご相談を受けた記憶もあるように思います。

仕事柄、相続に関する紛争についてご相談を受けることは日常的にありますが、時には、葬儀費用を巡る紛争であるとか、葬儀の際に遺族などに口論が生じて紛糾したというお話を伺うこともあります。

そうした場合には香典は喪主に帰属すると判断するのが裁判所の通例であるとか、葬儀費用に赤字が出れば喪主が自己負担せず相続財産から負担する方向で協議することが多いので、そうしたことも斟酌して協議するのが望ましいなどとお伝えすることにしていますが、そもそも、高額な金のやりとりがなければ、そうした問題も起きないのにと感じることも少なくありません。

私自身は長寿には関心はないものの、可能なら意識だけが幽体離脱するようなものも含めて人類の最期まで見届けたいという願望だけはあり、結論として、リアルな関係のある方がすべて亡くなられるまでしぶとく生きて、その代わり、死亡時は往時の私を知る人が誰もいないので、葬儀等は一切せず後始末を担当するどなたかが荼毘に付して終わり、というのが一番望ましいのではと思っています。

冬季事故渋滞の巣・住田町荷沢峠と改善策など~被災支援の地元弁護士の一コマ~

本日は法テラス気仙の相談担当日のため朝から大船渡に向かい、いつもどおり宮守ICから遠野の小友町経由で住田町の荷沢峠を下るルートをとりましたが、峠の下り坂に入って間もないところで突如、渋滞に遭いました。

この峠は冬季は凍結等によるスリップ事故の多発地帯で、震災に伴い大船渡や陸前高田の相談を担当するようになってから、この時期は何度も脇道に乗り上げた車両などを見かけています。

ですので、今回も恐らく同様と思われますが、事故で道路全体が塞がれてしまったのか延々と停車状態が続き、30分以上待っても動く気配がなく、どこで事故がおきたのか(現在の位置が渋滞の始点から何㎞地点なのか)も全く分からず、どれだけ待てば解消されるかも目処が立たなかったので、やむなくUターンし、宮守ICに戻って遠野IC→仙人峠道路入口→住田町という遠回りルートで大船渡に行きました。

そのため、ただでさえ盛岡・大船渡間で片道2時間を要するというのに、これに加えてトータルで2時間近くもロスし、午前中の相談予約の方は、やむなく午後に変更して対応いただきました(幸い、午後の予約が少なく、その点は助かりました)。

で、法テラス気仙に来てから事故情報が出ていないかネット検索したところ、今回の渋滞のニュースは見つけることができませんでしたが、その代わりに、過去の同じ時期に荷沢峠で生じた事故で渋滞被害に遭った沢山の方の怨嗟の声が見つかりました。

釜石道は、先般、遠野ICまで延伸されたものの、大船渡・陸前高田方面に向かう人にとっては、今後も荷沢峠方面が主要ルートであり続ける可能性が高いでしょうから、国道管理の関係者や「復興支援」としての道路対策を掲げている方々などにおかれては、事故渋滞対策を真剣に検討いただきたいものです。

さすがに、原資(税金)を考えると、釜石道から分岐した高規格道路というのは無理なのでしょうけど、峠の坂道のうち上りルートを登坂車線を含めて2車線化すれば、下り側の車両にとっても道幅が広くなり、事故渋滞のリスクはかなり減るのではと思われます。

ただ、事故そのものは撲滅困難でしょうし、道路の拡幅などもすぐにできることではないでしょうから、直ちにできる策として、この道路を通って気仙方面に向かう方(逆を含め)に、事故直後から事故による通行不能の情報を早急に伝えて別ルート(遠野IC廻り)を促す仕組みの強化が必要ではと感じます。

例えば、釜石道に事故情報を表示するなら今でもできることでしょうが、宮守ICと荷沢峠は片道20分程度は離れており、高速道路の管理者側の対応の問題なども含めれば、迅速な対応は難しいでしょうし、見落としの問題などもあり、対策としての実効性はあまりないと思います。

それよりは、事故渋滞などの情報が、なるべく事故直後の時点で、走行中の車両のカーナビ(や携帯電話)に警察や国道の管理事務所からダイレクトに送信され、画面にはっきりと表示されるような仕組みがあれば、とても有り難いように思います。

携帯電話であれば、すぐにできそうに思うのですが、まだそうしたサービスは提供されていないのでしょうか?或いは、信頼できる民間業者が情報提供の全般を担当しサービスの質などで行政と競争するとか、行政は情報の把握や公開だけを担当し、これを利用者に届けるサービスは民間が行うなどの仕組みもあってよいと思います。

とにかく、一定の時間までに目的地に着かなければならない長距離ドライバーの立場からすれば、「迂回路」が近くにはない山間部の国道の事故渋滞のような「分かった時点では進むも退くも地獄」という事態は非常に困りますので、渋滞地点に到着するよりも遥かに早い走行中の段階で事故渋滞の情報(復旧予定時刻に関する見通しなども含め)を提供いただき、他の迂回路を早めに選択できるよう、「ICT革命」を起こしていただきたいと願っています。

ちなみに、本日の法テラス気仙の相談内容は、「お子さんがいない高齢の方の相続のあり方が主たる課題であるもの」が多く寄せられ、現時点で相続が生じた場合の見通しのほか、お住まい(借地)の原状回復の問題や養子など、関連する様々な論点や選択肢を説明し、まずはご自身や承継者となりうる方と協議して、どのような相続などの形を望むのか(目的)をはっきりさせてください、現行法のどのような制度を利用できるかという話はその後のことですよ、と毎度ながら説明しました。

こうしたケースでは、兄弟姉妹も高齢のため、甥姪などに後事を託さざるを得ないものの、問題の所在や対処のあり方などについて認識の共有や協議がなされておらず、そうした方(事後対応のメイン人材)の同席がないことがとても残念と言わざるを得ないことが通例という現実があります。

いつも書いていることですが、福祉的なものや地域のつながりなども含め、高齢者の方のご相談は、お一人ではなく適切なつながりのある方とご一緒にお願いしたいと繰り返し述べざるを得ません。

ツイッターのなりすまし被害と救済手続に関する現在の難点と改善策

先日、ツイッターのなりすまし被害(AがBの名前などを勝手に用いて自分をBと称して他者の誹謗中傷をするなどの方法でBの名誉を毀損するもの)の救済方法について勉強する機会がありました。

結論として、現在の法制度では、地方の一般的な弁護士がこれを手掛ける上では、初動段階で重大な問題(壁)があり、現状では東京などの一部の弁護士の方に依頼するか、その「壁」を警察に対処していただくか、どちらかを要するのではないか(但し、その「壁」を乗り越えることができれば、それに引き続く問題は、私にも問題なく対処可能)と感じています。

具体的には「ツイッター社に対し、なりすまし投稿者のIPアドレスを開示させる」という問題です。

そもそも、ツイッターに限らず「2ちゃんねる」や他の匿名掲示板であれ、インターネット上に名誉毀損やプライバシー侵害等にあたる投稿がなされた場合、被害者が投稿者を突き止めて賠償請求等を希望する場合、①第1段階として、当該投稿が表示されているサイトの運営者に、その投稿に関するIPアドレス等(アクセスログ)の開示を求める、②IPアドレス等の表示をもとに、その投稿が送られてきたプロバイダ会社(投稿者のアクセスプロバイダ)を確認し(基本的に確認可能とされています)、そのプロバイダに対し、投稿者に関する契約者情報(契約者≒投稿者の氏名、住所等)の開示を求めるという2段階の手順を踏むことが必要となっています。

そして、②については、国内の企業(今ならソネット、ぷらら、ニフティなど)が行っているが通例でしょうから、訴訟手続(発信者情報開示請求)は決して困難なものではないのですが(多分)、①については海外の企業が開設者(運営窓口)になっているサイトがあり、この場合には、基本的にその国を巻き込んだ手続が必要になり、英語絡みの仕事をしていない大半の「普通の町弁」には、対処困難になっています。

例えば、ツイッターの場合、ネットや文献によれば、日本法人に対処能力がなく米国ツイッター社を相手に①の手続をする必要があるとされ、原則として、同社の本社がある米国の特定の州に提訴すべきところ、東京地裁でも提訴可能(逆に、日本で行うなら東京地裁でなければダメ)とされています(根拠は民事訴訟法3条の3第5号、同4条4項、5項、民事訴訟規則6条などのようです)。

この点は、中澤佑一弁護士の著作「インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル」71頁以下に詳細な説明があります。

さらに、裁判の基本ルールとして、相手方の登記事項証明書を取得する必要があり、米国に申請する必要があるため、その種の作業を行うノウハウ(語学力)のある方を通じないと入手は困難と思われます。この点については「ツイッター 登記事項証明」などと入力して検索して発見した、次のサイトが参考になるかもしれません。

また、開示を求める仮処分申立書も米国の住所等を表示しなければならないのでしょうから、そうした点や手続内で生じる様々な論点に英語(時には当該国の法律)で対処することも含め、残念ながら現状では「英語で仕事ができる弁護士」でないと(少なくとも後方支援がないと)対処が容易でない面が強いと思われます。

一般的にIPアドレスの保存期間が3ヶ月とされていることなども考えると、「IPアドレスの開示の仮処分」の申立を希望される方は、すでに実績を挙げている(と宣伝している)きちんとした東京の法律事務所か、上記の問題を十分にクリアできるだけの体制を備えた弁護士の方に依頼するほかないと言わざるを得ないように思われます。

ところで、こうした「名誉毀損投稿の受け皿サイトに外国企業が介在し権利行使の壁が大きくなるという問題」は、「2ちゃんねる」でも生じています。

私は、10年近く前に「2ちゃんねる」の誹謗中傷投稿について相談を受けたことがあるのですが、当時、「2ちゃんねる」の創設者たる西村氏が、事業をシンガポール国籍の企業に売却したとなどという話があったので、「2ちゃんねる」への投稿者のIPアドレスを開示させる手続(仮処分)も、同様の壁をクリアしなければならないので、地方の一般的な町弁では対処困難とお伝えし、実績を宣伝している東京の事務所をご紹介したことがあります。

ただ、この種の訴訟で支払が命じられる金額は必ずしも多くはありませんし、回収の問題もありますので、上記の手続を賄うに足りるだけの賠償金を得ることができるかは、慎重な判断が必要と思われますし、そのせいか、この種の問題(2ちゃんねるなどを含め)で訴訟等の手続がなされることは滅多にないように感じます。

それだけに、「違法投稿者の発信者情報の開示」については、名誉毀損等の刑事事件であるとの前提で、被害者の地元警察など(できれば弁護士一般も)が管理先企業に照会し即日に開示するような実務慣行ないし仕組みを直ちに作っていただければと強く思います。

少なくとも、いわゆるオレオレ詐欺やヤミ金融などで用いられた銀行口座の凍結については、被害者が警察等を通じて口座開設先の金融機関に申告すれば直ちに凍結される仕組みが出来上がっていましたので(私は利用する機会がありませんでしたが、10年ほど前から弁護士も所定書式を提出すれば凍結される仕組みになったはずです)、関係機関がその気になれば、法改正などを要せずとも十分に可能と思われます。

そもそも、一般人を対象とするなりすまし投稿のようなものは、以前に社会を震撼させた遠隔操作事件のような特異な例を別とすれば、被害者の身近な関係にある人(学校なら同級生など在学生・学校関係者、会社なら同僚、社会人なら「ママ友」のような知人など)が行うことが多いと言ってよいはずで、それだけに、事件の本質は近隣関係者による理不尽な加害行為であり、地元の警察など司法機関が解決のため活用されるべきですし、その前提で、当たり前の仕事を行う際に支障(壁)になる実務上の問題があれば、それを除去する工夫が必要だと思います。

そうした意味で、「IPアドレスの開示のため外国企業を訴えなければならず、一般的な実務家では対処困難な壁がある」というのは明らかに不適切な状態になっているというべきで、至急の改善を要すると思います。

被害者の立場からすれば、上記のように、警察等に被害申告をすれば直ちにIPアドレスを開示する制度が一番望ましいですが、それが困難ということであれば、例えば、社会内で一定以上のユーザーが生じているなど違法投稿が問題となる(なりうる)サイトについては、消費者庁の指定制度を作るなどして指定されたサイトを運営する外国企業は違法投稿の被害申告があればIPアドレスを即日に特定の行政部門に開示するものとし(これに応じなければ営業停止=サイト閉鎖などの処分の対象とする)、被害者は開示情報を保管する行政庁に被害状況などを証明して開示申立をし、行政がその適正を迅速に確認して開示の当否を判断するというような「被害者がIPアドレスの開示に関し企業を相手に訴訟手続等をしなくともよい(他の機関で代替可能とする)仕組み」を作るべきだと思います。

せっかく弁護士が激増しているので、日弁連をはじめ、そうした立法運動を盛んに行っていただける方がおられればと思われ、なおのこと残念に感じてしまいます。

弁政連岩手支部と県内の議員さん方との懇談会

2月20日に弁護士政治連盟(弁政連)岩手支部と県内の議員さん方との懇談会があり、参加してきました。

弁政連とは、事実上、弁護士会が作った政治運動?的な組織であり、同種のものは弁護士に限らず各士業で作られているものですが、他士業が自分達の職域拡大のため熱心に活動しているのに比べ、弁政連はそうした活動に積極的ではなく地元の議員さんとたまに懇談をする程度の活動に止まっている例が多いようで、岩手もその典型という感じではあります。

今回は、まず、総会の時間を利用し弁政連の会員でもある階猛議員から現在の国政に関する報告と題して階議員が取り組んでいる幾つかの事柄(憲法改正や財政、特定秘密法など)について、同議員の見解表明を含む問題意識に関する説明がありました。

続いて、各党の国会議員や県議会議員の方々が15名ほど出席された形で懇談会が始まり、震災問題が最重要テーマとして取り上げられ、陸前高田で活動する在間文康弁護士が、再建支援金(住宅)、援護資金貸付、各種給付金、災害公営住宅、災害関連死、被災ローン、造成地の瑕疵など、様々な話題についてご自身が取り扱った相談・受任事件などに基づく詳細な報告を行い、それに対し議員の方々が質問や意見を述べるというやりとりがあり、これで予定時間の大半を使った形になりました。

私自身は、在間先生が赴任される以前は陸前高田に当時あった相談センターなどに月1回以上のペースで赴いていたのですが、当時は他の被災地も含め、最も相談を受けていたものが「義援金等の受領者(世帯の代表者)が家族に配布せず独り占めしている」という内部紛争的なものでした。

そのため、当時から、立法?問題として世帯主に給付する形式はやめるべきで、内部的にも分配ルール等を定めるべき(不当な独り占めは不当利得返還請求等もできるものと明言されるべき)と感じていましたが、どういうわけか当時も今もこの話を問題にする方が誰もおらず、その点は今も不思議に感じています。

ただ、懇談の中で議員さん側から「賃貸アパートの貸主として生計を立てている人は、借主が支援金を受給するのに、自分は何も貰えず建築ローンのみが残って立ちゆかなくなった」という発言がありましたが、これは私も震災直後に宮古市などに赴いた際に何度か聞いた記憶があり、懐かしく感じました。

その際は、「多くの人が問題意識を共有しているので、何らかの制度が定まるまで待ってみては」とお伝えしていたのですが、結局、私的整理ガイドライン(いわゆる被災ローン減免制度)による銀行債務の一部免除以外にはさしたる制度ができていないように思われ、その点は残念に感じています。

他に、法曹養成制度(主に修習生の困窮)について弁護士側から議員さんに改善への後押しを求める陳情的な説明がなされていましたが、そこで時間切れとなり、私が準備段階の会合で取り上げて欲しいとお願いしていた「包括外部監査人など、政治部門(行政・議会)への地域の弁護士の関与の機会の拡大」というテーマには触れていただけませんでした。

以前にも書きましたが、私は「大雪りばぁねっと事件」に関する一連の民事訴訟に関わっている唯一の「岩手の弁護士」で、要のポジションにある方の代理人をしていることもあって、事後処理絡みを中心に様々な「残念な事情」を把握しています。

それだけに、できれば、守秘義務の範囲内でそうした話も交えつつ未然防止に関する制度改善や地域の弁護士の活用などの必要性を説明することができればと思っていただけに、残念に思いました。

そもそも、私が弁政連に加入したのは、狭義の政治運動(反政府闘争の類や業界権益絡みなど)に関わりたいからではなく、町弁業界が新人弁護士激増の受け皿となる「活動領域の拡大」(ペイに長期戦が必要なものを含む広義の「仕事」の増大)ひいては、それを通じた「地域社会への法の支配(法の正義を中心とする日本国憲法の理念を生かした社会形成)の浸透」について地道な努力をする必要に迫られており、地元の政治関係者への支援要請はそれに対する真っ当な方策ですので、そうした営みに汗をかきたいという理由からでした。

ですので、震災絡みであれ他の事項であれ、地域の様々な社会課題を取り上げ、かつ、「望ましい解決のあり方」を提言するというだけでなく、その解決の過程に「地域の弁護士を、このような形で活用してほしい」との提言、陳情を含むのでなければ、弁政連がそれを行う意義は乏しく、私が関わる必要もないと感じています。

そうした意味では、今回の懇談会が、上記の包括外部監査人のような「地元弁護士の仕事を増やすための陳情」よりも、修習生の窮状云々の説明という「業界への予算を増やしてほしいとか、弁護士の数を減らすべきという主張に親和性のある陳情」を優先させたことは、その文脈に照らしても残念な感じがしてしまいます。

また、この種の会合には常のことではありますが、様々な方が多様な論点や問題意識につき意見を仰るものの、百家争鳴して話は全く進まずという感は否めず、その点も残念に感じました。

根本的には、上述のような「弁政連(岩手支部)とは何をする組織なのか」という定義付けの問題があるのですが、多くの団体や支持者などと関わりを持たなければならないという意味で、時間が限られているであろう議員さん方との懇談の機会を持つにあたっては、個別実務に関する問題意識を説明するだけでなく、その改善を具体的に実現するための法律や条例などの案(改正を含む)や現行規定の具体的な運用案のような形(それを議員さんがそのまま議会等に持って行き、立法活動や議会からの行政への要望という形で伝達できる)で提言し、実現過程の協議まで繋げるような工夫が必要ではと思いました。

もちろん、問題意識そのものが浸透していない論点では意識喚起の説明だけで精一杯にならざるを得ないでしょうが、震災絡みの論点の多くは問題意識そのものは異論なしという話も多いでしょうから、なるべく各論(改善案)の話を進めていただければと感じています。

ところで、弁政連(岩手支部)は「不偏不党」という政治運動と真っ向から矛盾するような?スローガンを掲げていることもあり、開催にあたっては県内の国会議員と県会議員の全員の方々に参加依頼をしており、出席予定者に関しては、概ね各党の方々が参加を表明されていたのですが、どういうわけか、自民党系の県議さん(予定者3名)が当日は全員欠席となり、高橋ひなこ議員は参加されていたもののすぐに所用?で退席されてしまったので、結果として、階議員をはじめとする民主系と主濱議員をはじめとする小沢氏ないし達増知事系、旧地域政党いわて系列(いわて県民クラブ。平野議員は欠席でした)、あとは共産党と公明党と無所属の県議さんのみという出席者構成になっていました。

私は弁政連の立ち上げのときから参加しており(力のない窓際会員ですが)、私の記憶でも、議員さんとの懇談会は例年とも民主系列など(国政野党)の方は割と多く参加されるのに対し、自民系列の方の参加はいつも少ないという印象が強く、弁政連側のポリシー(特定政党に偏する支持はしていない)という点に照らしても、残念に感じています。

階議員の本来の職業が弁護士(しかも岩手会所属)であることや、その関係で弁政連側も階議員(や系列の民主県議の方)と懇意にされている方が割と多いように見える(逆に、自民系の国会議員さんや県議さんと親しくしている方は私の知る限りではあまりおられない?)ことも、そうした背景にあるのかもしれません。

ただ、旧地域政党いわて系の方々も例年よく参加されているように感じますので(平野議員も今回はたまたま急用とのことでした)、その点はよく分かりません(単純に、自民系の県議さん達は地元の弁護士は相手にしていないということなのでしょうか?)。

40年も前の話で恐縮ですが、私の祖父は自民系列の県議(二戸選挙区)として1期を務めており、残念ながら2期目で落選して引退になったのですが、どこまで本当かよく分からないものの、福岡工業高校を誘致したのは祖父だとか政治に手を出したせいで家業が倒産寸前まで追い込まれたとか、子供の頃は、そうしたことで色々な話を聞いたことがあります(なので父は政治に関わることを強く嫌っていました)。

それだけに、私自身が選挙と関わることはないでしょうけど(人気投票には適性なさすぎですし)、地域のニュートラル(やや保守系のノンポリ無党派層)な法律実務家として、与野党を問わず地域の課題抽出や立法過程などに汗をかいて欲しいと求められれば、お役に立ちたいとの思いを募らせつつ、そうした機会に恵まれないまま鬱屈した日々を過ごしているというのが正直なところです。

今回の懇談会も引き続き議員さん方との懇親会があり、上記の観点から地元の県議さんで私を必要として下さる方にお会いすることができればと思っていたのですが、妻が外せない飲み会があるということで、残念ながら弁護士側では私だけが不参加となり、この種の話がある際の通例として夕食は近所のスーパーで家族の割引弁当を買いに行くというトホホな夜になりました。

兼業主夫の宿命なのか高校進学時の呪いなのか分かりませんが、弁護士会であれJCであれ議員さん方であれ、もっと盛岡や岩手の方々と距離を縮める機会があればと思いながら、どういうわけか私には引力よりも引き離そうとする力のほうが強く働いてくるような感じがあり、そういう星の下に生まれたのだろうかと時に悲哀を感じながらも、まずは自分にできることを地道に模索し続けたいと思います。

ともあれ、弁政連関係者の一人として、ご参加いただいた議員の皆様に御礼申し上げます。

報酬の算定をめぐって弁護士がクヨクヨするとき、しないとき

先日、交渉段階で大きな成果を勝ち取り示談で終了した賠償請求事件で、依頼主に当方が希望する成果報酬をお伝えしたところ無事に快諾いただきましたが、依頼主からは「その3、4倍の額を請求されると思ってました」と、当方がお願いした額が想像よりも大幅に安かったので驚いたというコメントをいただきました。

その件は弁護士会の基本的な報酬会規をもとにした計算(獲得利益ベース。但し、回収額ではなく受任前提示額との差額に基づく)を前提に、短期間で成果をあげて完了したことや、依頼主と顧問契約をしており割引もした上で計算したため通例の報酬基準よりも相当に低い額になったのですが、さすがに、「3、4倍の額を請求され支払うものだと思っていた」などと言われると、もっと高額なお支払をお願いすればよかったなどとトホホ的な軽口を思い浮かべないでもありません。

私には良くも悪くもその場で瞬時に「言い間違えました。本当の請求額はこれです!」などと言いくるめるような聡明さ?は微塵もありませんので、口頭やメールで算定根拠の補足説明をして、その件は終了とさせていただきました。

恥ずかしながら、数年前までの「殺人的なスケジュールと引き換えに経済的には恵まれた時代」と違い、現在は運転資金に喘ぎつつどうにか経営している有様ですので、たまには利益率の大きい仕事(報酬)をいただかないと事務所が保たないという気持ちもあり、どうしようかと迷いつつ、結局、僅かな時間で成果をあげた事案では割引しないと罰が当たるとの強迫観念から逃げられなかった小心者というのが率直な実情なのかもしれません。

記憶の限りでは、幸い、私はこれまで依頼主と報酬を巡り揉めた記憶がなく、少なくとも成果報酬については、一旦提示した額を依頼主の対応を見て増額するなどということはもちろん、減額した(要求された)こともなかったと思います。

ただ、最近は法テラスの立替事案や交通事故の弁護士費用特約に基づくタイムチャージ事案など、当方に実質的な金額算定権のない受任事案が多いため、昔のことを思い出せないだけかもしれません。

ただ、弁護士費用特約に基づく受任事案に関しては、数年前に保険者たる某大手損保に請求したところ不当拒絶?されたので、その件では、会規よりも減額した請求をしており、それにもかかわらず拒否するなら訴訟も辞さずという通知をしたところ了解いただいたという経験が1度だけあります。

その際は、改めて、この損保さん(相手方として対峙することが多い)は何でも値切らないと気が済まないのだろうかと感じたものでした。

着手金については相談当初では幅のある数字で示すことも多いので、結果として依頼主の反応を見て修正することもあるかもしれませんが、やはり揉めたという記憶がなく、結局のところ、私と揉めるようなタイプの方とは最初から信頼関係を築くことができず、相談段階で終了になることが多いように思います。

もちろん、町弁の宿命として事案の性質上やむを得ない(ご本人の負担としてはこの程度に止めざるを得ない)受任費用に比して膨大すぎる作業量になる超不採算案件の受任も、法テラスでないものも含めて幾つかあり、中には相手方というより依頼主の個性に起因すると感じるものもないわけではありませんが、これも修行と思って腹をくくる方が精神衛生のためだと割り切るようにしています。

近年、刑事弁護に関して同業者の目からすれば異様とも取れるような高額な費用設定を堂々と掲げる事務所とか、同業者はおろか社会一般からも顰蹙を買うような宣伝を行う事務所などが話題になっており、最近では業界では過払等で急成長したことで著名な事務所が消費者庁から広告に関し景品等表示法違反で処分を受けたという報道もありました。

そうした事務所が多数の弁護士を擁し派手な宣伝を行い自らの規模を誇っている様子を見ると、一定のあざとさ、悪どさがないと、今後の弁護士業界では生き残れないのだろうかと悲しくなることもないではありません。

しかし、報酬の適正は業務の適正と並んで業界の命綱であり、誠実さと正直が最も大事という点は、少なくとも15年前から弁護士をしている私の世代では業界の常識でしたし、今後もそうした常識が生き続ける業界であるために、自身の持ち場でできるだけの最善を尽くしていきたいと思っています。

岩手県環境生活部との懇談会と県内の公害・環境分野の各種課題⑥質問事項その5(アセス、地球温暖化、行政連携など)

岩手弁護士会公害対策委員会と岩手県環境生活部との懇談会に関する投稿の5回目(最終回)として、県に提出した質問事項のうち、ILCに関するものなどを掲載します。

第7 その他、環境法全般(公害紛争、アセス、教育ほか)について

◎ 国際リニアコライダー(ILC)とアセスメント等について

本県及び宮城県が誘致に向けて盛んに活動している国際リニアコライダー(ILC)を巡っては、地下が主とはいえ巨大な施設であり高度で未知の研究の実践を伴うことから、ILCが建設された場合の建設中や操業時、稼働終了後に地域の環境に何らかの深刻な負の影響が生じる虞もあるのではと危惧する声も見られますが、それに対する対処については、報道などでもほとんど取り上げられることがないように感じております。

この点、大規模な公共工事などについては、環境に及ぼす影響を事前に調査・公表し住民に意見表明の機会を提供する制度として、環境影響評価法に基づく環境アセスメント制度がありますが、ILCは同法の対象事業には含まれておらず、ILCの設置が決まった後に、設置主体たる国際機関がアセスメントを実施するとか、それに先立ち貴庁が環境の影響に関する何らかの事前調査を行うとの報道を見かけるに止まっています。

実施されるアセスメントが、環境影響評価法に定めるアセスメントと同等以上のものであるか、県のものは岩手県環境影響評価条例に基づくアセスメントを実施するのか、住民には参加・関与の機会が与えられているのか、そもそも(設置するか否かの判断の前ではなく)設置が決まった後にアセスメントを行うということ自体が適切と言えるのか(この点は同法についても同様で、しばしば批判される点と認識しています)、推進の立場を強く表明している貴庁が実施するアセスメントに実効性があるのかなど、幾つかの素朴な疑問を感じないこともありません。

アセスメントに限らず、ILCにつき県民なかんずく建設予定地の周辺住民の理解のもと生活環境上の不適切な影響ないしリスクの発生を防止し安全な設置や運営を確保するにあたり、貴庁において特に課題として取り組んでいることや現行の法規制に関し改善を要すると感じた点がありましたら、ご教示下さい。

第8 地球温暖化問題について

○ 各種バイオマスエネルギーの普及などについて

地球温暖化問題が本格的に取り上げられるようになった十数年ほど前から、バイオマスエネルギーが注目され、近時も藻谷浩介氏の著書「里山資本主義」で国内外の取り組みが紹介されるなどしていますが、現在のところ代替エネルギーとしての利用等は僅かな比率に止まっているように思われ、昨年は木質ペレット製造等を営む県内の企業が破産を余儀なくされる事態も生じています。

広い山林を擁する本県における各種バイオマスエネルギーの普及などに関し法的な課題として貴庁が感じていることなどがありましたら、ご教示下さい。

○ 民生部門のCO2排出減の対策としての規制的手法について

地球温暖化問題については、これが盛んに取り上げられていた時期(震災前など)には、経済的手法(ガス発生抑制による事業者の受益など)のほか、規制的手法(店舗の深夜営業規制をはじめ何らかの電力利用規制をするもの)についても議論があったと思われます。

現在も民生家庭部門と民生業務部門で排出量の増加が顕著とのことですが(当県平成26年環境報告書8頁)、規制的手法の導入やそれに類する自主的取組みなどに関する県内世論の把握ないし貴庁のお考えについてご教示下さい。

第9 公害・環境問題などに関する当委員会ないし当会と県との協働などについて

◎ 公害・環境に関する県組織と弁護士会(当委員会)との連携について

県民生活の向上などを目的とした貴庁と当会との協働に関しては、例えば、岩手県民生活センターと当会消費者問題対策委員会、岩手県福祉総合相談センターと当会高齢者・障害者支援センター委員会などが連携して各種相談事業を行うなどの取り組みが代表例として指摘できると思われますが、公害・環境に関する分野(生活環境上の被害などを含む)については、これまでそのような取り組みは特段なされていなかったと思われます。

当該分野に関し、貴庁と当会が消費者分野や福祉分野のような何らかの連携・協働関係(例えば、公害・環境・生活被害に関する相談企画ないしその支援、規制基準などの照会対応・調査の協力など)を持つことができるか、仮に持ちうるとすれば、その窓口となる部署はどちらになるか(環境生活部か、岩手県環境保健研究センターか、各広域振興局か、それ以外か)、実施にあたり生じうる課題など、この点に関する貴庁のご意見をお聞かせ下さい。

◎ 県の審議会などへの委嘱について

現在、公害・環境分野に関する貴庁から当会会員への各種役職の委嘱については、公害審査会の委員として選任されている会員がおりますが、他には(当委員会としては)把握できておりません。

弁護士大増員政策の影響などから、本県で活動する弁護士の多くが公害・環境分野に限らず従前に弁護士の関与が乏しかったとされる様々な分野への従事を希望していますが、公害・環境分野における貴庁の業務ないし活動との関連で、弁護士の関与や就任などが望ましいと感じているものがあれば、お聞かせ下さい。

岩手県環境生活部との懇談会と県内の公害・環境分野の各種課題⑤質問事項その4(湿地・自然災害・ダム、化学物質など)

岩手弁護士会公害対策委員会と岩手県環境生活部との懇談会に関する投稿の5回目として、県に提出した質問事項のうち水環境に関するものなどを掲載します。

第5 水環境・需給政策などについて

○ 湿地・湿原の保全について

現在、県内の幾つかの湿地・湿原が面積減少ないし消滅の問題を抱えていると言われており、近時の報道では、山田町の船越半島にある小谷鳥湿地の農場(圃場)造成による消滅(岩手日報平成26年4月9日論壇)、春子谷地湿原の土砂流入による面積半減(朝日新聞本年1月8日)などが指摘されています。

湿地・湿原については、生物多様性をはじめ生活環境の保全等の見地から多くの重要な機能を営むものとして、ラムサール条約をはじめ世界的に保全を重視する傾向が見られ、沖縄県の泡瀬干潟のように開発を巡って訴訟が生じる例もありますが、本件では全国的に著名な湿原などが見られないせいか、湿地の保全や利活用等について話題になることは少なく、上記のように僅かに残る小規模な湿地群も多くが消滅等の危機に瀕しているように思われます。

湿地保護・保全に関する貴庁の対策に関し特に紹介できるものや法的な検討を要する論点などがありましたら、ご教示下さい。

○ 豪雨被害などに関する原因や対策について(開発行為などの問題)

平成25年夏に県央部で大規模な豪雨災害が生じるなど、近時は他県を含め、内陸部でも水に関する自然災害が生じていますが、平成26年に広島市で生じた土砂災害のように、もともと災害リスクが高い土地に宅地開発がなされたこと自体に問題があったのではと感じる例も見受けられ、訴訟等に至る例も生じるのではないかと思われます。

豪雨災害に限らず、先の震災を含む自然災害による被害に関し、開発行為などがなされたことで被害が拡大したと見られる例や、そのことを通じて開発行為の規制(による既存の自然環境などの保全)の必要性を感じた例、現に今、その教訓を生かして取り組んでいる例などがありましたら、ご教示下さい。

○ ダム開発(脱ダム問題など)について

我が国ではダム開発を巡り数十年に亘り多くの反対運動などが生じ、近年では八ッ場ダム建設などを巡って事業の不要性や公金支出の違法性を主張する住民訴訟が生じたほか、一部の県知事や民主党政権が「脱ダム」を唱えて中止等に及ぶ例もありました。

他方、本県ではそうした動きはほとんど見られず、気仙川流域の津付ダムが平成26年に中止の発表がされたのを除き、胆沢ダムや現在も工事中の簗川ダムなど、大きな反対運動や訴訟等が生じることなく粛々と開発や建設が進んだ(進んでいる)ように見受けられます。

他県と本県とでそうした違いが生じた原因・背景のほか、ダムをはじめとする周辺の自然環境などに大きな影響を生じさせる大規模な公共事業に関する現在の法制度について特に改善等を要すると感じた点がありましたら、ご教示下さい。

第6 化学物質・食品安全などについて 

○ 科学技術の発展に伴う新種の公害・環境被害について

かつて社会問題として注目されたシックウハウス症候群やアスベスト問題、近年に注目されている電磁波問題(携帯基地局周辺の被害申出)、風力発電やエコキュートなどに関し言及されている低周波騒音、農薬及び遺伝子組み換え食品など、科学技術の進展に伴い新たに開発される、化学物質をはじめとする身体に有害な影響を及ぼしうる物質等の利用に関して、県内で顕著な被害申告などが寄せられる例がありましたら、貴庁等で行われている対処、対策なども含めてご教示下さい。

岩手県環境生活部との懇談会と県内の公害・環境分野の各種課題④質問事項その3(自然保護、景観など)

岩手弁護士会公害対策委員会と岩手県環境生活部との懇談会に関する投稿の4回目として、県に提出した質問事項のうち、自然保護、景観に関するものなどを掲載します。

第3 自然保護(自然・生物保護、生態系、自然公園等、森林等の保全)について

○ シカ等の食害対策について

近時、五葉山や早池峰山などのシカ等の食害(農地や稀少植物の被害)が頻繁に報道され、狩猟従事者の減少や気候変化などが原因として指摘されているように見受けられます。野生生物保護と生態系や農林業被害の防止などの両立という観点から、現在の法制度などで特に改善等を要すると感じた点がありましたら、ご教示下さい。

第4 大気・都市環境・生活環境・アメニティなどについて

○ 防潮堤建設による弊害(景観の毀損など)について

現在、本県沿岸被災地の各所で高さ十数メートル規模のコンクリート製防潮堤の建設が進んでいますが、防災等の実効性の存否や海岸が視界から外れることなどによる弊害(防災意識、漁業関係者の不都合、生態系などへの影響のほか地元民の海と共に生きる意識の減衰など)、景観問題などについて住民等の議論や関心が喚起され、政策形成等における住民参加のあり方や、急ピッチで建設が進んでいることの原因の一つとされる国の補助金支出のあり方なども問われているように思われます。

防潮堤の建設問題に関する環境生活部の関わりと、防潮堤の建設等に関して環境の保全(環境基本法)や良好な景観形成の促進(景観法)などの観点から現在の法制度などで特に改善等を要すると感じた点がありましたら、ご教示下さい。

○ まち並みや農山漁村の景観等の保全について

近年、城下町・宿場町・門前町など全国各地に残る歴史的な集落・町並みの保存や復元などが注目され、現在は農山漁村の自然及び文化的景観を含め、地域の文化的アイデンティティへの貢献や外国人観光者・移住者なども視野に入れた地域固有の景観等の保全や利活用が求められていますが、他方で、地域内の著名建築物などが道路開発により失われたりマンション等に建て替わるなど、個々の地域内では保全よりも喪失に関する話題も珍しくなく、被災地の防潮堤も同様の問題を孕んでいるように思われます。

まち並みや農山漁村の景観等の保全或いはこれと私権とを調整する観点から、現在の法制度などで特に改善等を要すると感じた点がありましたら、ご教示下さい。

○ 生活環境に関する新種の被害・紛争について

昨年は、大都市圏では住宅密集地に保育所を建設し近隣住民から騒音問題の苦情が出るなど、生活環境に関する紛争に関し、従前とは異なる新たな問題が取り上げられるようになってきたと思われます。

各種の生活環境(騒音、振動、悪臭、水質汚濁など水利用、土壌汚染など土地・地盤の利用ほか)に関し、ここ数年の貴庁の業務などを通じ、本県内で特に問題が生じていると感じる事項(分野・紛争類型)や現在の法制度などで特に改善等を要すると感じた点がありましたら、ご教示下さい。

 

岩手県環境生活部との懇談会と県内の公害・環境分野の各種課題③質問事項その2(廃棄物関連など)

岩手弁護士会公害対策委員会と岩手県環境生活部との懇談会に関する投稿の3回目として、県に提出した廃棄物関連などの質問事項を掲載します。

第2 資源循環・リサイクル・廃棄物関連について

○ 新クリーンセンターについて

昨年、いわてクリーンセンターの後継となる県の関与に基づく産業廃棄物最終処分場の設置について、八幡平市平舘地区を候補地とすることが定まったとのことですが、操業開始までに必要となる作業や権利関係の調整などに関し、法的な観点から、現在、貴庁が特に課題として把握又は認識されている点をご教示下さい。

○ 軽米町の産業廃棄物最終処分場問題について

軽米町で建設が計画され地元住民などの反対運動がなされている産業廃棄物最終処分場について、報道によれば、昨年末、事業者が貴庁に施設の設置許可の申請書を提出したととされています。

報道では、反対住民側は予定地が河川に隣接することなどを理由に設置又は維持管理に関する基準を満たさないと主張しているように見受けられますが、当該問題で貴庁が把握されている争点の概要などをご教示下さい。

○ 廃棄食品の転売問題と予防策について

先般、愛知県の産廃中間処理業者が大手カレーチェーン店から処理を受託した廃棄カツ類を処理せず他社に有価物と称して転売していたとされる事件が発覚していますが、本県内では同種事案を防ぐため実効性ある特別な取り組みがなされているのでしょうか。未然防止はもちろん、排出・生産抑制も含め、導入の必要があると考える制度などがありましたら、お聞かせ下さい。

この点に関し、日弁連では平成22年に本県で開催した人権擁護大会において、電子マニフェストを通じて廃棄物処理情報を追跡・把握するシステムの導入を提言していますが、そうした制度があれば、相当の期間内の最終処分業者への焼却灰の埋立委託の有無を委託主である排出事業者に報告する作業などを通じ、この種の偽装・横流し事件を防止できた可能性もあると思われます。併せてご意見をいただければ幸いです。

○ 処理未了の腐敗廃棄物を残して倒産する企業への対策について

平成26年に県内で家畜の死骸や動物性残渣などの処理を行っていた企業(東北油化㈱)が自己破産を申請し、事業所に残置されていた廃棄物の処理が問題となりました。報道によれば平成27年中に完了したとのことですが、仮に、処理費用を自ら賄うことができなかった場合、事業所の悪臭問題等の事情から行政代執行を余儀なくされる事態もあり得たのではないかと思われます(報道によれば、当初は、廃棄物処理の費用の捻出が可能かも危ぶまれていたように見受けられます)。

同種の問題の予防のほか処理業者の倒産による原状回復の公費転嫁の問題の対処として、現在、貴庁が取り組んでいることや制度或いは事業者側の実務の改善などを求めている点がありましたら、ご教示下さい。

○ 県境不法投棄事件の総括と跡地利用について

県境不法投棄事件については、廃棄物及び汚染土壌の撤去等については作業の大半を終えているとのことですが、産廃特措法に基づく特定支障除去事業の開始から現在まで、原状回復事業の遂行にあたり、法制度面で特に改善等を要すると感じた点がありましたら、ご教示下さい。

また、排出事業者への責任追及など同事件に関してこの10年強の間に貴庁が取り組まれてきたことで、現行法の不備ないし限界として特に改善を希望する点などがありましたら、お知らせ下さい。

また、不法投棄現場の跡地利活用については青森県では同県サイトや地元紙などで植樹祭などが紹介されているのに対し、当県では報道などで取り上げられることがほとんどないように思われます。この点に関し貴庁の方針や従前の取組みなどで、特筆すべき点がありましたらご教示下さい。

○ 震災(大津波)に伴う災害廃棄物の処理と広域移動について

東日本大震災津波により生じた災害廃棄物については、国の支援により仮設焼却炉が設置されたほか、一部の廃棄物が遠方に搬出される(広域処理)こともありました。他方、広域処理については、受入側の住民に原発被害に付随する非難のほか処理費用そのものも割高ではないかとか仮設焼却炉についても短期間で稼働を終了させることなどに税金の無駄ではないかと主張する意見もあったように思われます。

一連の作業などを通じ、貴庁において特に制度改善を要すると感じた点、仮に同種災害が生じた場合に異なった運用を要すると感じた点などがありましたら、ご教示下さい。

○ リサイクル分野などに関する近時の論点について

その他、廃棄物処理、発生抑制、リサイクルなどの分野に関する県内の事業者の活動などについて、特に問題があると感じている例などがありましたら、お聞かせ下さい。近年は、食品廃棄物や家畜排泄物などからバイオマス発電等を行う事業なども開始されていますが、環境分野の法令との関係で問題となる事例や現行法制に改善を要すると感じる点などがあるようでしたら、併せてお聞かせ下さい。

岩手県環境生活部との懇談会と県内の公害・環境分野の各種課題②質問事項その1(エネルギー、原発事故被害など)

前回に続き、今回から県庁との懇談会で使用した質問事項を掲載します(少し表現を修正しています)。

質問事項は、当委員会で今後の課題として取組みを検討・希望している事項の一覧を列挙したものですが、当日の懇談事項として特に優先させたものにつき、◎を付しています。

今回の目的は、県庁の特定の活動に疑問等を呈して議論を挑むことではなく、現在の様々な課題に関する県の取り組みを拝聴しつつ、現行の法制度の内容や運用に関する問題意識(改善を要する点やそのあり方)を質問するということに重きを置きましたので、問いの仕方もそうしたコンセプトに基づくものとなっています。

ですので、個々の質問内容については、食いつきが足りないというご批判もあるかもしれませんが、それはそれとして、県内で公害・環境などの分野に関心を持って取り組んでおられる方々に参考にしていただき、弁護士会との連携なども検討していただければ幸いです。

第1 エネルギー問題と原発事故被害(汚染廃棄物問題を含む)

◎ 自治体の原子力紛争解決センターに対する賠償請求

原発事故の被害について、貴庁及び県内自治体が原子力紛争解決センターにこれまで申し立てたADRについて、損害発生や因果関係の認定に関し、特に問題となった点(東京電力が強く争ったものの和解案で認められたものや貴庁が強く勝ち取りたかったものの退けられた点など)がありましたら、ご教示下さい。

◎ 岩手県内の民間被害などに関する実情と県の把握

原発事故の被害については、平成25年に原子力損害賠償紛争審査会から風評被害に関する第三次追補が公表された際、貴庁の主催などにより県内の事業者向けの風評被害の賠償請求に関する説明会も開催されたものの、その後は賠償請求の問題については貴庁らのADRを除き報道で取り上げられることがほとんどなく、被害及び賠償請求等に関する実情を掴みかねるところがあります。

当会内でも、当委員会や被害対策弁護団などが窓口となって無料相談事業や事件受任を行っていますが、件数としては大きなものとなっていません。

被害状況や賠償等の実情の把握に関する貴庁の取り組みや今後の課題などに関し特筆すべき点がありましたら、お聞かせ下さい。また、県内の民間被害(事業者・個人、県民・避難者などを問わず)の把握に関し、何らかの調査(アンケート等を含む)を行っている場合は、その結果などをご教示下さい。

○ 汚染廃棄物の処理や保管について

放射性物質に汚染された廃棄物の処理などに関する問題について。本県では8000Bq/kgを超える指定廃棄物の量は環境省サイトによれば475t(焼却灰が200t弱、その他275t)とされ、宮城県などと異なり最終処分場の設置も予定されていません。他方、焼却時に8000Bq/kgを超えると見込まれる汚染稲わら、牧草について、他の廃棄物と混合焼却して焼却灰を埋め立てているとの報道がありますが、混焼については有害物質の拡散であるとして焼却も含めて批判し、線量減衰まで焼却せず長期保管すべきとの意見もあると聞いています。

また、日弁連の平成27年の報告資料(人権擁護大会第三分科会の基調報告書156頁)によれば、宮城県では8000Bq/kg超の稲わらでも指定廃棄物の指定申請をせず県が厳重に管理するものがある一方、基礎自治体が国の委託で保管している指定廃棄物についてビニールハウス内で仕切り板等のない状態で置かれている例もあるとされています。他にも、埼玉県は指定申請をせず全て県が保管しているとの報道(日経新聞平成26年9月29日)もあります。

県内における指定廃棄物の処理(埋立)や混焼、焼却前の汚染廃棄物の保管などに関し、以上を踏まえ、貴庁の取り組みとして特筆すべき点や法的な課題として把握・認識されている点がありましたら、ご教示下さい。

○ 太陽光や風力による発電施設の設置や維持管理について

現在、県内各地で太陽光発電施設(メガソーラー)の建築が進むほか、風力についても県北や北上高地などで大規模な設置計画が構想されているとの報道を多く目にします。他方、これらについては、安全面の不安や運営企業が倒産等した場合の将来の撤去等の確保、景観・反射光・低周波音など周辺環境及び近隣住民との調和など様々な課題も述べられるようになってきたと思われます。

当方もまだ不勉強ですが、これらの構築物に関し廃棄物処理法のような詳細な設置及び維持管理の規制があるのか(設けなくてよいのか)など様々な課題が未整備ではないかと感じているところです(Webで検索する限りでは、一定面積を超える施設につき自治体への許可申請を要する条例があるとか、山梨県が設置に関するガイドラインを策定したなどの記事を見かけます)。

メガソーラーや風力発電施設の設置や維持などに関する法的な課題として、現在、貴庁が特に課題として把握又は認識されている点をご教示下さい。

○ 地熱発電に関する施設の設置について

地熱発電については、盛岡市繋地区や雫石町(八幡平エリア)などで発電所の設置が検討されているとのことですが、周辺環境の保全ないし乱開発などに伴う被害の防止、温泉業者をはじめとする利害関係人との権利関係の調整など、法的な観点から、現在、貴庁が特に課題として把握又は認識されている点をご教示下さい。