北奥法律事務所

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三陸道で直結した大船渡と陸前高田の未来と気仙川

先日の木曜、法テラス気仙の担当日のため、大船渡市に行きました。昼は、芸能人の来訪で有名になった「百樹屋」さんに行ってみたのですが、休みになっており、さらに、市内の著名イタリア料理店「ポルコ・ロッソ」も休みで、その他にも休みになっている飲食店をいくつか見かけました。

大船渡の飲食店は木曜定休が多いのか?と不思議に思ったのですが、引用のニュースからすれば、津波注意報のため大事をとって臨時休業されたお店もあったのかもしれません。
http://www.nhk.or.jp/lnews/morioka/6043464111.html?t=1396522184375

帰路は、開通したばかりの三陸道(大船渡・陸前高田間)に行き、気仙川を遡って宮守IC方面に向かいました。大船渡碁石海岸ICから陸前高田ICにはごく僅かな時間で到着でき、時間的には、国道107号線ルートで住田町の分岐点に向かうのと、ほとんど大差ない感じすら受けました。

陸前高田は1年ぶり位で、震災後のメインストリート感のある竹駒地区を北上した程度でしたが、相変わらず仮設又は簡易なしつらえの建物が多いせいか、大船渡との復興格差を感じる面が少なからずありました。

大船渡と陸前高田が三陸道でつながり、両市の社会的・経済的な距離が一気に縮まると思いますが、反面、大船渡と陸前高田との間で、ストロー現象のような事態が生じることも危惧されると思われます。

両市は震災前から合併するとかしないとか(仲が悪いとかそうでないとか)、井戸端話を耳にすることもありましたが、法制度を待たずして一体化しつつあることは否定しがたいと思われ、社会経済上の適切な役割分担など、圏域の住民全体の福利に資するような形で都市設計をしていただければと思っています。

ところで、陸前高田から住田町にかけて流れる気仙川は、国道340号・107号に沿うように流れているため、この街道を運転する際には季節を問わず、渓流の美しさを感じながら運転でき、ささやかな楽しみになっています。

私の知る限り、気仙川沿いには著名な奇岩とか渓谷美の名所として古くから称賛されている場所などが無いため、一般にはさほど知名度がないと思われますが(県内の釣り人の方にはよく知られているようです)、「南の久慈渓流」と言ってよいと思われる美しさがあります。

交通の便の高まりと共に内陸との交流なども活発になり通行者も増加すると見込まれますので、特に景観美を感じさせる場所などに休憩スポットや店舗等を整備いただいてもよいのではと思っています。

東京電力と「放射性廃棄物」の処理に関する措置命令

産廃処理ないし原発事故絡みの廃棄物処理に関心のある方向けの投稿です。

先日から、「福島の製材会社が、放射性汚染のため、東電の賠償金を原資として木くずの廃棄処理を業者に委託したところ、その業者が滋賀県などに不法投棄したという事案」のニュースが流れています。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014040402000128.html

この点、廃棄物処理法の一般原則からは、不法投棄の実行者たる処理業者及びその関係者が撤去責任を負う(法19条の5。具体的には、投棄先の都道府県を管轄する知事等が撤去措置命令を行う)ことはもちろん、委託した排出事業者(製材業者)に、その処理業者が不法投棄を行うことについて過失がある(投棄を予測し得ただけの事情がある)場合には、その排出事業者も措置命令の対象となります(19条の6。但し、伝家の宝刀的な規定で、未だ発出例がありません)。

その上で、仮に、この事件で、製材業者ではなく(だけでなく)東電にも、処理業者が不法投棄を行うことについて過失が認められる場合(例えば、処理業者の選定などについて東電が深く関与し、かつその業者の処理対応能力について疑義を持ちうるだけの事情がある場合など)には、木くずを廃棄処理せざるを得ない原因を作り出した東電にこそ、法19条の6に基づく撤去責任を認めるべきではないかという立論が成り立つように思われます。

また、仮に、この廃棄物が「汚染対処特措法」の指定廃棄物(1㎏あたり8000ベクレル超)に該当するのであれば、廃棄物処理法ではなく同法の適用対象になるのではないか、その場合は、同法51条に基づき国(環境大臣)が東電その他に措置命令を出すのか(できるのか)など、さらなる論点が生じてきそうな気もします。

少し調べてみたところ、この件では、処理業者とは別の業者が撤去作業を実施したとのネット投稿を見かけたので(双方の関係などは不明です)、東電の責任云々の出番はなさそうですが、膨大な量の「放射性廃棄物」の発生に照らせば、今後も似たような事件が生じる可能性もあります。

私は、県境不法投棄事件をきっかけに、廃棄物処理法の措置命令について少し勉強したことがあったので、今後もこの種の問題の報道に関心をもって見守っていこうと思っています。

 

受験生時代にすれ違った有名人

ネット生保の創業で時代の寵児となった岩瀬大輔氏の新入社員向けの発言がニュースで取り上げられていました。岩瀬氏は、大学在学中に司法試験に合格されたものの、法曹界ではなくハーバード大に進み、ビジネス界に身を投じたという、当時の日本人としては異色かつスケールの大きい経歴の持ち主としてもよく知られています。
http://www.j-cast.com/2014/04/03201162.html?p=1

どうして、このニュースを取り上げたかというと、つい先日、自宅内に放置されていた司法試験受験生時代の資料を廃棄したのですが、その際、平成8年か9年頃の辰巳法律研究所(受験予備校)の「択一試験に合格した人向けの直前答練(模試)」の資料があり、解説末尾の成績上位者一覧に、岩瀬氏のお名前が何回か登場しているのを発見したため、当時のことを懐かしんで、触れてみたくなったという話でした。

なお、残念ながら私自身は岩瀬氏とは面識はなく、同氏が最初に出版された生保関係のことが書かれた新書本を拝見した程度です。

私は、新入社員=イソ弁時代、始業前に出社するどころか、朝は最後に出てくる不良社員だったせいか(夜は終電頃まで仕事してましたけど)、パッとしない田舎の地味な町弁人生を続けています。

ただ、遅まきながら、数年前から始めた「判例・論文のデータベース作り(購入中の判例雑誌の要旨を関連法規に即してエクセルにまとめる地味な作業)」を毎日のように続けており、岩瀬氏には遠く及ばずとも、せめて、サバイバル状態に突入した町弁業界で生き残るための糧になってくれればと思っています。

自筆遺言証書に関するリスクと相談の必要性

自筆遺言証書を作成された方の死後に、ご遺族から相続の手続のご依頼を受けることが増えています。

自筆遺言証書は、大概はご本人が弁護士等に相談せずにご自身の考えに基づいてお書きになっているようですが、中には、言葉や表現に曖昧な要素が含まれるなど、解釈の余地を残すものも見られます。

遺言書の文言が一義的に明確でなく解釈の余地を残すものである場合、遺言者の希望に沿った解釈ができればよいのですが、そうでない場合には、他の解釈に基づいて相続財産が分配されたり、時には文言の意味が不明確だとして裁判所から無効扱いされ、遺言のない状態として法定相続に基づく処理を余儀なくされる場合もあります。

公正証書ではなく、自筆証書で遺言の作成を希望されている方は、そのような事態を防ぐためにも、文案を作成された後、その文言でご希望のとおりの効果が得られるか、確認のため弁護士にご相談いただければと思っています。

遺言を希望される方に関しては、「元気なうちにまずは自筆遺言証書を作成し、ある程度、余命や健康に不安を感じるようになったら、公正証書遺言の手続を行う」というスタンスで臨まれる方もおられるようです。

弁護士は守秘義務を負っていますので、自筆証書遺言の作成後に文言の内容についてご相談いただいたり、場合によっては遺言執行者や公正証書遺言における立会証人などの形で積極的にご活用いただいても良いのではと思われます。

県境不法投棄事件における県民負担と果たされぬ総括

日本最大規模の不法投棄事件と言われた、岩手青森県境不法投棄事件(平成11年発覚)について、ようやく現場の廃棄物の撤去作業が終了したという報道がなされていました。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/iwate/news/20140326-OYT8T00737.htm

報道によれば、撤去等のため両県併せて708億程度の費用を要した一方、岩手県が回収できたのは8億程度に止まるとされています。

私の記憶では、撤去計画が承認された平成16年頃の時点で、青森県の見積が440億、岩手県の見積が220億程度(大雑把に言えば、青森:岩手が2:1)となっていましたので、岩手県については、最終的な費用は236億円程度になったと思われます。

そして、産廃特措法により、国が費用の6割を補助するはずなので、単純計算で県の負担額は94.4億円となり、上記の回収額を全額、県が補填できるのであれば、最終的な岩手県=県民の負担額は、86.4億円となります。

岩手県の現在の人口が130万弱だそうなので、単純計算で、子供も含む一人あたりの負担額が6646円強、4人家族なら2万6600円ほどの費用負担を、首都圏など全国各地から運ばれてきたゴミの撤去のため、県民が強いられたという計算になります。

もちろん、100億円弱もの巨額の資金があれば、震災復興であれ県北その他の振興や福祉であれ、地域のため相応に有効活用できたはずです。

県境事件は、今やすっかり風化し単なる公共事業のように思われているのかもしれませんが、上記の機会を県民から奪ったものだと県民には受け止めていただきたいと思います。

ところで、この事件の顕著な特徴は、主犯格の2つの産廃処理業者が青森と埼玉で営業する業者であり、被害拡大に関しては、青森県と埼玉県の監督不行届が大きかったのではないかと指摘されている(そのため、岩手県は当初から、被害県だとアピールしていた)点とされています。

結局、現行制度の限界として、この点(青森県と埼玉県の監督責任)を法的な手続により問う機会は得られぬまま、この事件は幕引きを迎えてしまったのですが、果たしてそれでよいのかという点は、皆さんにも考えていただきたいところです。

この点に関し、平成22年の日弁連人権大会では、「A県の許可を受けた業者がB県で不法投棄事件を引き起こした場合、事情に応じてA県もB県が要した撤去費用の一部を負担する制度を設けるべき」という趣旨の提言をしています。
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/civil_liberties/year/2010/2010_3.html

残念ながら、このような制度は未だ実現していないことはもちろん、公の場で議論の俎上にすら載せられていないでしょうが、少なくとも、岩手県民は、そのような制度がないことによって、上記の負担を強いられているのだという現実は、認識していただきたいところです。

もちろん、岩手以上に高額な負担を余儀なくされた青森県はもちろん、古くから産廃問題に苦しんできた埼玉県にとっても、有り難くない話だとは思いますが、そうした制度の存在が、行政の担当者に緊張感を与え(言うまでもありませんが、そのような形で自治体=住民に生じた負担については、事実関係によっては自治体の担当者や首長などが住民訴訟の形で責任を問われる可能性があります)、結果として早期の監督権の行使=被害の防止に資するという見方はできるのではないかと思います。

撤去完了により事件の幕引きが見えてきたという現状を踏まえ、岩手・青森両県の住民の手で、改めて、事件の総括を考える機会があってもよいのではと感じています。

 

岩手教育会館の建替と「歴史まちづくり法」

盛岡城址(岩手公園)の袂にある岩手教育会館(7階建)が、3年後を目処に4階建の建物に生まれ変わるという報道がありました。
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20140319_3

盛岡では、古くより盛岡城(石垣)から岩手山を望む眺望を誇りとする市民感情があり、景観法(平成16年制定)が作られる遥か以前(昭和59年頃)から、「盛岡城址の石垣の上から岩手山を結んだ線よりも高い位置まで建物を立てるのは禁止」というガイドラインを作成していたそうで、実際、その後に、少し離れた中央通に計画された商業ビルが、市の強力な「行政指導」で高さ制限を受けたという例もあったと聞いています。

ただ、その話については、「盛岡城の石垣(二の丸~本丸)の真正面(岩手山が見える北東面)には、産業会館(サンビル)、教育会館、農林会館の3つの巨大建物がドデンと居座っており、それらのせいで岩手山の眺望がちっとも見えないじゃないか」と思わざるを得ないところがあります。

少し調べてみると、この「岩手山眺望阻害三兄弟」などと言ってみたくなる3つの建物は、いずれも昭和30~40年代に竣工された建物なのだそうで、反対運動的なものがあったかどうかは知りませんが、少なくとも、当時は、法令上の規制は言うに及ばず、行政指導すら無かったのでしょうから、その意味では、非難できる筋合いでもないのだろうと思います(時系列的に見れば、この三兄弟の出現が、上記のガイドラインの登場に一役買っているかもしれませんが)。

他方、上記のガイドラインは、現在、景観法に基づき盛岡市が平成21年に策定した景観計画に引き継がれており、法律上の明確な根拠がありますので、これに沿った形で教育会館が建て替えられることについては、上記の眺望(景観)に価値を感じる者の一人として、率直に歓迎したいと思っています。

折角なので、サンビルと農林会館も、余勢を駆って建替(或いは移転)を検討されてはいかがでしょうかと思ったりもします。ちょうど、岩手山の眺望問題をさほど考えなくてもよさそうな東側の岩手医大が移転することから、そちらに「新・産業農林会館」を、飲食店舗などを交えた複合施設として作っていただいてもよいのではと思わないでもありません。

ところで、教育会館の建替にあたっては、景観等の観点から、もう一つ、指摘しならない事柄があり、このことは、とりわけ盛岡市民の方々には、よく考えていただきたいことだと思っています。

平成20年に、城跡など歴史的な名所・旧跡を残した風景の保全やまちづくりの活用への支援等を目的として、「歴史まちづくり法」という法律が制定されています(正式名称は、地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律)。

法律の内容や活用状況は、以下に引用した国交省サイト(パンフレット等)をご覧いただければと思いますが、代表例として金沢城趾とその周辺地域の整備や保全などが掲げられており、金沢市を手本として城下町整備をすべきと思われる盛岡城趾及びその周辺地域についても、この法律の適用を受け、景観の保全や充実化に取り組んでよいのではないかと思われます。
http://www.mlit.go.jp/toshi/rekimachi/toshi_history_tk_000003.html

そして、教育会館の建て替え(新会館の建築)にあたっても、「盛岡城址に隣接する主要建築物」としての教育会館のあり方・位置づけを再検討いただき、デザイン等はもちろん、会館の機能等のあり方も含めて(言うなれば、佐藤可士和氏的な発想で)、石垣等と調和し歴史的な風致の向上を強く支えるような会館を造っていただきたいと思いますし、場合によっては、そのプロセスには、会館の施工主や市役所以外の方(歴史的景観の保全等に知見等のある専門家や住民等)が関与してもよいのではと思ったりもします。

例えば、藩校(明義堂・作人館)の写真や図面等が残っているのであれば、その意匠をデザインに取り入れるのが、「教育会館」に相応しいと思わないでもありませんが、いかがでしょう。

残念ながら?、盛岡市は、まだこの法令に基づく「歴史的風致維持向上計画」の認定申請をしていないようですので、ぜひ、地元の各種団体等(某「明るく豊かな社会を作ることを目的とした団体」など)におかれては、そうしたことにも取り組んでいただければ幸いに思いますし、住民一般にも、この点に関心を寄せていただければと思っています。

 

フランチャイズ制度の現状と課題

今月(平成26年3月)の日弁連機関誌(自由と正義)に、フランチャイズ制度の特集記事が載っていました。大雑把な内容(項立て)としては、以下のようになっています。

①フランチャイズ制度に関する基本的な視点(学者の先生の講義)

②公正取引委員会のアンケート結果やフランチャイズ内部=本部と加盟店との各種紛争(本部の事前開示情報と実際との相違、本部の経営指導義務違反、加盟店の会計に対する拘束等、中途解約等、同一加盟店の近隣出店、違約金や保証人)の紹介と立法提言(加盟事業法)

③業界団体(本部側の団体である日本フランチャイズチェーン協会)の取組(相談センター等)と本部側からの加盟店紛争(諸論点)に対する考え方

④米国(フランチャイズ制度の発祥国)・韓国(日本に匹敵する普及国)の法制度や実情等

岩手でも、大規模店舗やロードサイドなどを中心に、私をはじめ一般住民が現に消費対象として利用する店舗の多くが、地元系列を含むフランチャイズ関連の店舗になっていますが、私個人に関しては、残念ながら、フランチャイズ・ビジネスに関する紛争(本部と加盟店との紛争)に関する相談や事件依頼等を受けたことはなく、加盟店や統括支部(サブフランチャイザー)をなさっている方から、業務等に絡んで何からの相談を受けた程度です。

私の「FB友達」にも、フランチャイズ・ビジネスに携わっている方は少なからずおられますが(JC関係者など。大半は加盟店側だと思います)、この種の記事をチラ見すると、訴訟までするかどうはか別としても、何らかの形で本部側に「過去の裁判例や現在の議論などを踏まえた待遇改善」を訴えてもよいのに、そのような論点等があること自体を知らず、不遇な待遇に甘んじている人もいるのではないか?と思わないこともありません。

労働者の場合、ご自身の所属企業と闘わなければならない事情がある場合には、企業内に労働組合がなくとも、いわゆる合同労組に加盟し、その支援を受けて企業に団交要求するなどの方法があるのですが、私の知る限り、フランチャイズ・ビジネスにはそのような制度等はないと思います。

少し調べたところ、加盟店側にも「全国FC加盟店協会」という、コンビニ経営者などを中心とする団体があるようですが、HPを見る限り、岩手支部は結成されていないようです(他に、同種の団体等があるかは分かりません)。
http://www.fcajapan.gr.jp/

合同労組のような強力な制度はまだしも、一定の地域内でフランチャイズ・ビジネスをしている方々(加盟店や小規模な統括支部など)が、勉強会や親睦会など緩やかな横のつながりを作って業務等の質を向上させる営みをなさってもよいのではと思いますし、そうしたものであれば、冒頭の論文などをネタ本にした簡単な勉強会等の形で、「フランチャイズ専門」などとはお世辞にも言えない地元の弁護士も、少しは物のお役に立てるのかもしれません。

 

政党の分裂時における政治資金(献金や交付金)の分割のあり方について

平成24年7月に生じた、「小沢氏ら(生活党)が民主党を脱退した際に、同氏と共に脱退した民主党岩手県連の元幹部が、同県連名義で預金されていた県連の政治資金の大半(4500万円)を引き出したため、民主党側が元幹部に賠償請求した事件」で、先日、引出し金の大半(4000万円)を元幹部が民主党岩手県連に引き渡して終了とする和解が成立した旨の報道がありました。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/iwate/news/20140312-OYT8T01146.htm

この訴訟の第1審・盛岡地裁判決は、民主党側の請求を全面的に認めたのですが、ちょうど、先日に郵送された判例時報(2209号119頁)に、この判決が掲載されていました。

裁判では、元幹部の行為が、県連の役員(資金管理者)としての権限を濫用、逸脱したか否かが争点となり、元幹部側は、「引出金(政治資金)は、小沢氏(判例時報では匿名表示)を支援するため集められたお金なので、小沢氏の脱退により小沢氏側が引渡を受けるべき=権限濫用等にあたらない」と主張しました。

が、裁判所は、当該預金が民主党側に帰属し、民主党と利害が対立する生活党側に利益を図る目的で資金移動をしたのは権限濫用だとして、元幹部側の主張を一蹴しています。

判例時報の解説では、「これ(党の資金が個人ではなく政党に帰属するとの考え)が、政党の離合集合時における資金処理のルールとなるか問題もあり、立法でこの点の法整備が望まれるとの意見もある」としていますが、判決文を見る限り、元幹部=生活党側が、訴訟でこのような観点から、事実関係や法律論を掘り下げて主張をすることはなかったようです。

この件では、提訴後まもない時期に、当時の事務所HP(日記)に、下記の投稿をしたことがあります。

要するに、元幹部の引出金が、小沢氏個人の政治活動を支援することを目的として献金等されたものであれば、手続云々はともかく、献金等の趣旨に照らせば生活党側が引き継ぎたいと思うのはごもっともと言えるので、仮に、そうした事情があるのなら、団体役員の権限濫用の成否とか預金の帰属主体などといった私法上の解釈に、政党の分裂時における政治資金の清算のあり方等に関するあるべき姿(公法上の議論)をどこまで斟酌することができるかという意味での「憲法訴訟」になればと期待した投稿でした。

残念ながら、判決を読む限り、元幹部(生活党)側は、預金(政治資金)の出所等に関する具体的な主張はしなかったようですので、そのような議論がなされる前提を欠いたと見るほかないと思われます(それを明らかにすることが生活党側にとって不都合だったのか否か、野次馬的には関心がありますが、判決からは何も読み取れません)。

この問題の本質は、原資が献金であれ税金(政党助成法に基づく交付金)であれ、争いの対象となっているお金(政治資金)が、本来的には争いの当事者(民主党側も元幹部=生活党側も)のものではなく、拠出者のものであり、それが特定の目的のために拠出されたものである以上、政党の分裂にあたっては、分割等の対象となる資金の拠出目的(拠出者たる献金主や納税者の意図)も斟酌した上で、分割等の内容や当否が判断されるべきではないかということではないかと思います。

とりわけ、現在は政党助成法に基づく交付金=税金のウェイトが大きくなっているやにも聞いたことがありますので、なおのこと、一般国民の立場からすれば、この種の議論や法整備が待たれるところではないかと思います。

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(以下、平24年10月12日付・当事務所「日記」の引用)

【民主党分裂に伴う預金持ち出し騒動と代表訴訟】

民主党の分裂時に離党し新党(以下「生活党」といいます)に移籍した議員の方が、同党岩手県連の預金計4500万円を持ち出したため、民主党と生活党とが争っている事件が生じ、先日、盛岡地裁への提訴報道があったことは、多くの方がご存知かと思います。

この種の訴訟の依頼は、一般的には、当該政党の支援者や議員さんと懇意にされている方になされるのが通例なので、私のような無縁社会に生きるノンポリ無党派にはご縁のない話ではありますが、法律論としては非常に興味深い論点を含んでおり、関心を持って報道を拝見しています。

報道の範囲で推測すれば、債務不履行=善管注意義務又は忠実義務違反と不法行為責任の二本立てのように見受けられましたが、原資の性格等を巡る争いや分裂直前の民主党内部の路線争い等の事情が、預金を持ち出した議員(政党役員)の義務や違法性などの解釈にどのように影響するのか、問題となった預金に関する権利の帰属のあり方やそれに関する政党本部と県連との関係、政党内部の紛争を規律する法の不備等の事情が、この種の訴訟の帰趨にどのような形で影響するか、といった事柄が議論の対象とされてよいはずで、私法と公法(なかんずく憲法)とが交錯する高度な論点を含んでいると思います。

ただ、原告=民主党側からすれば、そのような議論を避けて形式論理で違法性等を認めて欲しいと考えていると思われ、どちらかといえば、生活党の側が、どこまで議論を深めることができるか力量を問われる気がします。

その意味では、生活党側では、刑事事件における弘中弁護士のような、政治とカネに関する深い知見を有する第一級の弁護士の方に依頼してはいかがと思わないこともありません(原告代理人である岩手の先生方にとっては、余計なお世話としか言いようがありませんが…)。

ともあれ、政争にご縁のない庶民の立場からすれば、上記のような論点について検討が深められれば、国民に資するところが大きくなるのではないかと期待しています。

ところで、私がこの「持ち出し事件」の報道に最初に接した際に思ったのは、「仮に、残留組(現・民主党岩手県連)の役員の方々が、何らかの理由で訴訟提起を躊躇し続けた場合、その対応に不満を持った一般党員の方が、それに異議を申し立て修正させる法的手段はないのだろうか。或いは、設けなくてよいのだろうか」という点でした。

少し具体的に言えば、株式会社では、一部の役員等が問題を起こして被害を受けた場合に、他の役員(会社の意思決定権者)が役員等に賠償請求をしない状態を続けていると、それに不服のある株主が、会社に代わって当該役員等に対し、会社に賠償するよう求めることができ(代表訴訟)、一般社団・財団法人法にも同様の規定が設けられています。

地方自治体の運営においても、若干変則的な形態ではありますが、これと類似する(責任追及の対象はより広い)制度が設けられています(住民訴訟)。

しかし、私の貧弱な知識の範囲では、(マイナーな法令を別とすれば)このように、「組織・集団の少数者が、あるべき権利行使を怠るリーダー(経営者・多数派)に代わって権利行使をする(させる)」制度は、他に存在しないのではないかと思われます。

例えば、現在、国政(中央官庁の活動)に対しては、住民訴訟のような国民による異議申立制度は存在しないのですが、「行政に対する国民の監視」という観点から、国政でも住民訴訟と同様の制度を設けるべきだと主張する方は少なくありません。

政党に関しても、そのような制度は存在しないと思われますが(「政党法」の制定に関し、議論されているかどうかは存じませんが)、それでよいのかという問題は、これを機会に議論が深められて良いのではと思います。

少なくとも、離党騒動直前の段階では、民主党岩手県連に関しては、より多くの離党者が生じるのではと考えた方も少なくなかったはずですし、現在も、何らかの形での再合流等の可能性が囁かれている(達増知事等が期待している?)ことなどに照らせば、数ヶ月前の時点での可能性の問題として、提訴以外の展開もあり得たように思われます。

そのような展開を辿った場合、それに不満を抱いた一般党員には何ら救済手段がなくてもよいのかという視点は、検討されてよいのではと感じます。

なかんずく、本件で問題となった4500万円を出捐した方が現役の党員で、かつ、「この金員は現・民主党の側で使用すべきもので、生活党が持ち出すのは献金の趣旨に反する」と考えているのであれば、その救済を図る制度の必要性は高いと思われます(なお、報道によれば、生活党側は「本件4500万円は、民由合併時に自由党が寄付したもので、その原資は自由党=(主に)小沢氏への政治献金だ」と主張しているようです)。

逆に、生活党による「4500万円の出捐は、小沢氏の活動を支援したいとの目的でなされたものだ」との主張が真実なのであれば、当該金員を使用すべき実質的資格があるのは自分達だと主張したくなるのは、理解できない話ではありません。

仮に、本件持ち出し事件が生じない(引き出すことができなかった)状態で離党等がなされたケースを想定すれば、当該出捐を行った元?党員や生活党に移籍した元党員の側としては、「出捐(献金?)の趣旨に反する事態が生じた以上、返還(又は生活等に引渡)すべきだ」と請求したいと思いますし、そうしたことを実現する制度の当否が議論されるべきだと思います。

こうした論点は、「比例代表で当選した議員が、離党し他党に移籍した場合の議員資格の維持の当否」といった論点(平成8年の司法試験で出題されています)と類似すると思われ、その論点に関する議論が参考になるかもしれません。

さらに言えば、仮に、持ち出しの対象になった金員の原資が、政党助成法に基づく交付金であった場合、出捐者=納税者たる国民一般(或いは同法の所管の官庁)のコントロールを及ぼさなくてよいのか、という論点も生じると思います。

もちろん、この場合、政党の自治との衝突という別の視点が生じますので、余計に議論がややこしくなると思いますが、少なくとも、「金を出す者が口を出せない」ことの当否は議論されるべきかと思います。

長々と思いついたことを書きましたが、田舎でノンポリの町弁をしていると、こうした憲法や統治機構などに関する論点を実践的に勉強する機会がなく、その点は大いに残念に思います。

日弁連の憲法委員会などでは、秘密保全法問題など国策等に反対する運動に邁進するのも結構ですが、こうした制度のあり方などについて、価値中立的な立場で議論を深める活動もしていただき、その成果を、国民に資する形で会員に還元していただきたいと思わずにはいられません。

 

平成25年の業務実績

当事務所では、数年前から、毎年1回、前年度の業務実績の概要をブログで公表しています。ご一読いただき、当事務所へご相談等に関する参考としていただければ幸いです。なお、顧問先には、これに若干加筆したものをお送りしています。

(1) 全体的な傾向

本年は、交通事故を中心に、介護や保育の際の事故も含めて、事故の被害者の方からの賠償請求事件が大きな割合を占め(交通事故では大半の方が弁護士費用保険を利用されています)、離婚関係や相続関係などの家事事件も多数手がけました。反面、本年も債務整理・倒産等の業務は、全国的な傾向と同様、数年前と比べて大幅に減少しています。

(2) 企業・団体の業務や経営上の法的問題に関する支援

数年前から手掛けていた、「大手企業による継続的取引の不当停止に対する下請企業からの賠償請求」で、勝訴判決を受けています。これは、首都圏から岩手に進出したY社から下請取引(食品加工の業務委託)を受注したX社が、自社に何らの帰責性もないのに、Y社から突然に取引停止を言い渡されたという事件でした。

また、建設工事や食品製造委託取引に関連し、契約当事者(注文者=債務者)が誰であるか等が争点となった事件などを担当しています。この種の紛争(受注時に発注者サイドに複数の関係企業が生じ、後日に誰が契約当事者か=誰に代金請求できるか等が争われる例)は非常に多く、貴社におかれても、新規の取引を行う際に複数の当事者が生じる場合は、ぜひお気を付けいただきたいところです。

その他、企業取引に関し、ソフトウェアの利用等を目的とする契約に関する紛争への対応、「下請かけこみ寺」事業に基づく無料相談のご利用による企業取引上のトラブルに関する相談などを担当しています。

企業内部の問題では、不況(リーマンショック)で業績が悪化した企業から早期退職者募集制度や整理解雇の進め方等についてご相談を受けた例などがあったほか、法人関係者の責任追及の当否に関する訴訟も受任しています。

(3) 債務整理と再建支援

過去に比べ大幅に受任件数は減りましたが、建設会社や消費者向け物販企業など幾つかの企業や経営者の方の申立代理人や破産管財人を手がけています。

小売業の企業の自己破産の申立に関し、受任時に十分な申立費用が確保できず、当事務所の関与のもとで、閉店セール等の換価作業を進めて費用を確保した後に、裁判所に申立を行うという例もありました。

個人の債務整理については、いわゆる多重債務事案(多数の消費者金融業者から多額の高利借入をしている方)の相談を受けることがほぼ無くなった一方で、信用情報登録を回避したい方から、金融業者に約定額を完済した後に過払金を請求するご依頼が多くなっています。

自己破産等に関しては、生活保護世帯など非常に低所得又は無収入の方からのご依頼の比率が高くなっており、格差や貧困の問題を感じさせるものとなっています。

(4) 事故等による被害の賠償等の請求や防御に関する支援

本年も、交通事故の弁護士費用保険を通じて、被害者側での受任事件が増加しており、物損のみの事案や比較的軽傷の事案、重大な後遺障害が生じた事案や死亡事故まで、様々な案件を取り扱っています。

顕著な成果が生じたものとしては、専門性の高い仕事を行っていた方が被害を受けた件で、職務の性質上、自賠責保険の認定等級よりも高位の後遺障害が裁判で認定され、保険会社の提示より遥かに高額な賠償を受けることができたケースなどを担当しています。

保育・介護事故対人トラブルに基づく傷害事件についての賠償問題なども担当し、いずれも穏当な形での訴訟外の和解を成立させています。

また、被害者代理人として加害者の資産調査や債権執行(預金等の差押)を行う例も増えていますが、現在の執行法制の不十分さ(債権者にとっての使いにくさ、回収の難しさ)を痛感させられることも少なくありません。

(5) 個人(消費者)が交わす契約や社会生活を巡る法的問題の解決

借地契約の終了に付随して当事者間で紛争が生じた事件(先日、勝訴判決を受けました)や個人間の貸金などの訴訟を扱ったほか、紛争性は低いものの、関係者との直接のやりとりを避けたいとのご希望から、円満処理のための調整業務をタイムチャージ形式でお引き受けすることが増えています。

後者の例として、「競売で落札された物件に居住(賃借)中の方が、落札した不動産業者から法律上問題のある要求を受けたので、その対応や退去時の調整等を依頼された件」や「自宅の隣接地の枝が自宅敷地に伸びてきたため、隣接地に立ち入って切除をしたいが、所有者が遠方に居住し面識がないため、所在調査や連絡調整、合意書作成等の依頼を受けた件」などがあります。

また、訴訟等に発展していないものも含め、不動産取引に関する相談(購入後に敷地内に廃材の不法投棄が発覚した例など)を受けることが増えています。埋設をした者が倒産している場合(倒産企業の所有地を購入した場合など)には責任追及に大きなリスクを抱えることになります。その種の取引を行う場合は、リスク調査(当職へのご相談を含め)を十分に行って下さい。

(6) 家庭生活や親族関係、相続を巡る法的問題やトラブルの解決

離婚に関し、「住宅の購入の際に妻の両親が多額の援助をした場合、離婚の際に夫は妻の両親に援助金の返還義務が生じるか(贈与か貸金か)」「退職まで10年以上の期間がある場合の退職金予定額に関する財産分与の当否」などが争われた訴訟を担当しました。

また、面会交流の調整が主たる争点となり、調停の場で試験的な交流を繰り返してルールを定めるなど、きめ細かい対応を必要とする例もありました。

相続分野に関しては、「死亡危急者遺言」(危篤時に第三者(証人)が作成し後日に裁判所の確認を受ける制度)が作成された件で、遺言者の意思に反することなどを理由に遺言無効の当否を争っている事案、数十年前に亡くなった方の相続が放置されたため、数十人の当事者が生じて不動産の相続処理に様々な論点が生じている事案、親子関係の存否等が問題となった事案などを担当しています。

その他、成年後見の申立や後見人の受任案件、被災地の出身の方の相続財産管理人として被災地の土地の権利関係の処理を担当している案件などがあります。

(7) 行政との訴訟、刑事事件、その他の業務

行政を当事者とする訴訟の受任はありませんでしたが、昨年までに受任していた事件を機に、県内のある基礎自治体(町)から顧問契約をいただき、自治体の業務を巡って生じた法律問題について相談を受けています。行政(別の自治体)を相手方とする相談も幾つか受けています(区画整理関係など)。

刑事事件については、若手弁護士の激増の影響で国選事件は大幅に減りましたが、私選弁護の受任が増え、長時間の従事を必要とする複雑な事件や起訴されずに釈放され短期間で終了する事件まで、様々な案件を扱っています。

その他の業務としては、昨年に引き続き、被災者支援の一環として、弁護士会の被災地向け相談事業に参加するなどしています(大船渡の法テラス気仙などの相談担当のほか、県内企業の風評被害を含む原発事故に起因して被った被害の賠償問題を対象とする無料相談制度などを担当しています。)。

 

商業施設等の滑りやすい場所で転倒した場合の賠償問題

みずほ銀行の支店出入口の足拭きマットが滑り転倒、負傷したとして、被害者が同行に損害賠償を求めた訴訟で、銀行の責任を認めつつ被害者に4割の過失相殺をして、約100万円弱の賠償を認めたという判決が報道されていました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140313-00000154-jij-soci

この判決を見て、盛岡地裁の判決で、「岩手県内の温泉ホテルの大浴場の階段で滑って転倒し怪我をした日帰り入浴客に対し、ホテルの賠償責任(転倒防止措置の不備)を認め、過失相殺を4割とした例」があったのを思い出しました(盛岡地判H23.3.4判タ1353-158)。

引用のニュースも、転倒事故で施設運営企業の賠償責任を認めつつ過失相殺4割ということで共通しており、商業店舗等の滑りやすい状態になっている場所で起きた転倒事故の賠償問題を考える場合に、責任の成否や過失相殺の見通しを考える上で、相場観的なものや企業側に要請される予防措置なども含め、参考になると思われます。