北奥法律事務所

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中小企業の経営再建と弁護士の需要

中小企業庁の「経営革新等支援機関」という制度に登録している関係で、先日「いわて企業支援ネットワーク会議」という会合に参加してきました。

経営革新等支援機関とは、中小企業金融円滑化法の終了に伴い、金融機関の格付けが落ちて融資の返済要求を受け、これに耐えられず倒産する企業が多数生ずるのを防ぐため、必要な支援を行うことを目的に設けられた制度です。

具体的には、リスケジュールや様々な経営改善計画の策定や経営指導等を通じ、格付け低下=融資引き揚げを防ぐと共に、経営内容や収益を改善させていくことを内容としています。

上記の会議は今回が4回目だそうで、これまでも通知は受けていたのですが、制度の運用状況として、あまり弁護士の出番がなさそうな展開になっていることもあり、参加を見合わせていたものの、一度くらいは出てみたいということで、今回が初めての参加になりました。

で、予想どおり、弁護士で参加したのは私だけで、ほとんどの参加者(認定支援機関)は税理士さん又はその事務所の方でした。

また、会議の構成団体等として国の出先機関や中小企業再生支援協議会、県内の主要金融機関の方などが参加しており、現在の運用状況の説明などがありました。

それによれば、岩手県は、統計上は200社が対象になるはずだが、現時点で支援事業に対する相談は20件弱、申請がなされたのは6件のみということで、役所側にとっては、見通しを大きく下回る状況とのことでした。

岩手では、平成23年頃から自己破産等の申立も非常に少ない状況が続いており、建設業などの震災特需が影響しているのかもしれません。

報告によれば、全国的にも件数が多くはないほか、支援事業に従事しているのは税理士が5割、コンサル会社や金融機関が3割強で、弁護士が従事した案件は、全体の僅か1%しかなかったそうです。

これでは、やっぱり弁護士には関係の乏しい制度なのかな(ひいては、経営再建の分野そのものが、弁護士に関しては、企業再生で有名な村松先生のようなごく一部の方だけの専業分野に止まらざるを得ないのかな)、と思わざるを得ません。

ただ、それでも敢えて、支援機関に登録したり、たまに会合や研修に参加しているのは、私の場合、出自などの事情で、昔から中小企業を支援する類の仕事に強い関心があるということもありますが、経営再建の問題を抱えた企業は、法律問題の「るつぼ」であることが多いという点があります。

例えば、経営不振の原因が経営者の資質によるものであれば、そこに経営陣内部(ご家族などを含めた)の不和の問題があるかもしれませんし、取引先との関係にあるのであれば、契約内容や売掛金の回収などを巡って、様々な法的論点があるかもしれません。

過剰な人件費によるものであれば、解雇問題に直面するかもしれません。過剰施設の閉鎖等にあたっても、法的紛争が生じることもあります。

少なくとも、民事再生の手続をとった場合には、それらの問題が一挙に噴出し、債務者企業の代理人である弁護士がてんやわんやの対応に追われることは珍しくありません。

企業再生に関する相談は、資金繰りに関するものから始まるため、弁護士よりは金融機関や税理士さんの方に話が行きやすいでしょうが、先に相談を受けた他の専門家の方が、ご本人が気づいていない法的論点などを見出した場合には、弁護士への相談や対処をご紹介いただければと思っており、その一助になればと思って登録しているというのが、正直なところです。

ただ、ざっと拝見する限りでは、認定支援機関の主たる業務(合実計画・実抜計画の策定等)は、金融機関が交渉相手ということもあってか、被災地で用いられている「個人版私的整理ガイドライン」にやや感覚が近い面があるかもと感じています。

脇役だけでなく、認定支援機関としての主たる業務でも、お役に立てる機会があれば幸いです。

産院の取り違えから兄を救った弟と、兄を排除し損なった弟

本日、産院の取り違えに関し、取り違えられ肉親ではない女性に不遇な環境で育てられた子が産院を訴えて、3800万円の賠償が認められた判決のニュースが流れていました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131126-00000147-jij-soci

ニュースによれば、被害者Aさんの実の弟達3人が産院でAさんが取り違えられたことを突き止めたとあり、文脈からすれば、Aさんではなく弟さん達の方が、Aさんを兄として発見し、迎えるために動いていたように思われます。

Aさんの実の両親は既に亡くなられているとのことで、両親の遺産分割をこの4兄弟がどうなさるのか(やり直すのか等)、興味深いところですが、弟さん達は、そうしたリスクも承知の上で、Aさんと「そして兄弟になる」道を選んだと理解すべきなのかもしれません。

ところで、数日前、「産院の取り違えが生じた事件で、別の両親と50年以上、良好な関係を築いたBさんが、戸籍上の弟達と不和になり、弟達が、Bさんは実の兄(両親の子)ではないと主張しDNA鑑定で立証し遺産分割から排除しようとしたが、裁判所がその主張を権利濫用だとして排斥し、Bさんの相続権を認めた例」を勉強しました。

詳しくは、こちらの投稿(「取り違えから50年後に『そして親子になった』事件」)をご覧いただければ幸いです。
http://www.hokuolaw.com/2013/11/21/産院取り違えから50年後に「そして親子になった」/

何十年も経て取り違えが判明したという点では共通しているのに、一方は、弟の尽力で兄弟が円満に絆を取り戻し、他方は兄弟(血のつながりの有無はさておき)の諍いの果てに、血縁の不存在を利用して兄を相続から排除しようとした弟が退けられ、結果として、Bさんと育ての親という血の繋がらない者同士が特殊な形で親子として法的にも認められたという点で、全く逆の帰結を辿っているように見えます。

産院の罪深さはいずれも同じですが、その後どのような人間関係が形作られていくかについては、人の数だけ物語が異なってるというべきなのかもしれません。

●追記(11/27)

この日の報道番組で、前者(産院への賠償請求)について取り上げており、両家の家族(兄弟姉妹)の構成や発覚の経緯などについて少し触れていましたが、ひょっとしたら、後者(親子関係不存在確認請求訴訟が権利濫用で棄却された例)は、前者との関係で「取り違えられた、もう一方の家」ではないかという印象を受けました。

仮に、そうだとすれば、「α家に生まれながら、取り違えでβ家で育てられたAさんが産院に請求し認容された賠償額」というのは、Bさんがα家から相続した遺産と同等の額(及び慰謝料)なのかもしれません。

すなわち、Aさんは産院に対し、「β家に生まれながらα家で育てられたBさんが、上記判決によって資産家であるα家の両親から相続人の一人として多額の遺産を相続したため、本来であればその相続を受けられたはずのAさんが、取り違えのせいで相続=取得できなかった」として、Bさんが相続した財産に相当する金員の賠償(と慰謝料)を請求したというものであるのかもしれません。

もちろん、仮にそのような形でAさんが産院から逸失した相続分相当の賠償を受けることができれば、Aさんの実の兄弟達も、ある意味、損(Aさんが相続人として追加されることによる、割付を受ける相続財産の減少という意味で)をしなくとも済むという面が出てきます。

後者の事件では戸籍上の兄(Bさん?)と血の繋がらない弟達との間には不和が生じており、仮に、そうしたことが、弟さん達がAさんの発見に動いた背景にあるのだとすれば、この事件に対する見方にも、単なる美談だけではない人間臭さを感じることができるのかもしれません。

前者も、おって判例雑誌に掲載される可能性が高いでしょうから、この事件に関心のある方(とりわけ「取り違えれた、もう一人の男性」について知りたい方)は、双方の判決を照らし合わせて、この2つの事件が繋がっているのか、そうでないのか確認してみてもよいかもしれません。

後遺障害の認定申請時での弁護士への相談の必要性

今年は、交通事故の被害者の方から賠償請求を受任する例が多く、後遺障害が生じ、後遺症に基づく高額な慰謝料・逸失利益を請求している事案も幾つかあります。

後遺障害については、交通事故の場合、自賠責保険による認定制度があり、加害者が任意保険に加入していれば、その保険会社を通じて必要書類を提出し、自賠責調査事務所の審査・認定を受ける方式(事前認定)が一般的です。もちろん、加害者が任意保険に未加入なら、被害者請求という形で、加害者の自賠責保険に請求し、審査・認定を受けることになります。

いずれにせよ、認定された後遺障害の内容、等級に異存がなければ、その認定をもとに、自賠責保険金の支払を受けたり、これで賄われない損害額について、加害者に賠償請求し、争いがあれば裁判所の判断を仰ぐことになります。

これに対し、認定内容に不服がある場合には、医師に相談するなどした上で、自賠責保険の手続の中で異議申立をし、自賠責の判断の修正を求めたり、それが適わない場合には、裁判所に自賠責の判断とは異なる等級等の判断を求めていくことになります。

職業など個別的な事情によっては、自賠責の等級認定を上回る後遺障害の等級評価を裁判所から得られる場合もあり、1、2年前に取り扱った事件で、そのような評価を得て、高額な賠償を勝ち取ったことがあります。

ところで、ご相談を受けた案件の中には、複数の後遺障害が生じている方で、一部の後遺障害に関する自賠責保険に対する認定申請が抜けているという例がありました。

主たる後遺障害については相応の調査、認定が行われており、自賠責保険上の等級認定には影響しない下位等級の後遺障害の認定が落ちているという例がほとんどですが、それでも、裁判上、後遺症慰謝料や逸失利益の判断に影響がないわけではなく、やむなく、異議申立をして認定を求める作業をしています。

そのような意味では、後遺障害の認定が関係する方にとっては、加害者側の損保から示談案の提示を受けて初めて相談されるのではなく、事前認定の資料を提出する段階で、ご相談された方が賢明かもしれません。

例えば、どのような後遺障害があるか、ご認識を簡単に書面にメモ書きしていただき、すでに準備している後遺障害診断書などもご用意の上、それらと後遺障害等級表や認定基準などを照らし合わせ、個々の障害について予測される等級を確認し、申請の漏れがないか、より適切な資料を提出すべきでないかなどを検討するような作業をしてもよいのではと思います。

すべての事案で、そこまでの作業が必要ではないとは思いますが、弁護士費用保険などで相談料などは賄えるはずですので、本格的な準備の要否などを確認する趣旨の簡易な相談だけでも、早めに受けていただければと思っています。

地球温暖化対策プロジェクトチーム

平成16年から18年頃まで、日弁連公害対策環境保全委員会の「地球温暖化対策プロジェクトチーム」に所属していたことがあります。

日弁連の公害環境委員会は、私が所属する廃棄物部会のほか、水部会、化学物質部会、環境法部会、自然保護部会、原子力・エネルギー部会など、7つの部会に分かれて活動しています。

そして、それとは別に、部会横断的なテーマや新たなテーマを取り扱う場合に、有志がPTを作って、調査・意見書などの活動をしており、地球温暖化、水俣病、低周波音、東アジアの環境問題などを取り扱っています。

私は、平成16年に地球温暖化PTが発足した際、廃棄物部会からも一人を出向させよとの話があり、当時、部会では一番下っ端(若手)だったため、拝命に抗うこともできず、参加していました。

主力の先生が京阪神の方々だったため、何度か大阪に出張し会議に参加したほか、経団連や東京都庁への聴取に参加したことなど、懐かしい思い出です。

私自身は、地球温暖化の専門家などと言える身ではなく、主力の先生方の議論を拝聴し、意見書のごく一部のパートを担当するのが精一杯でしたが、当時、排出権取引(キャップ&トレード)や自治体の取り組みなど、地球温暖化を巡る様々な論点に関する資料を頂戴し、多少は勉強させていただきました。

地球温暖化PT自体は、平成18年に意見書を出して一旦解散し、その後、平成20年?頃に第二次PTが編成されたのですが、そちらは参加を辞退させていただいたため、平成18年以後、地球温暖化問題には全く縁のない状態が続いています。

最近、事務所の古い記録の整理(廃棄)を始めているのですが、温暖化PTの記録も、あれから出番がないまま、先日、ようやく当時の記録の大半を廃棄することになりました。

その中には、当時、温暖化問題を巡って議論されていた様々な関連テーマに関する新聞記事や欧州の温暖化対策法制など、地球温暖化問題に本腰を入れて取り組んでいる方にとっては、資料としての価値が相当にあるものも多く含まれていました。

そのため、県内等でそうした方にお会いする機会があれば、お渡ししたかったのですが、機会に恵まれず、残念というほかありません。

地球温暖化以外にも、公害対策環境保全委員会の関係者が作成した、日弁連等の様々な意見書も、平成10年頃から現在のものまで、ある程度は保存していますが、出番のない状態が続いています。

当事務所としても、古い記録の廃棄等が必要な段階に来ていることもあり、どうしたものやらです。

弁護士を15年も続けていると、何年も前に、色々なことと関わっていたことを思い返すことがありますが、現在まで何らかの形で続いているものは必ずしも多くはなく、その点は残念に思います。

時代の変化なのか、社会が大切なものを置き去りにしているのか、自分でもよく分からないというのが正直なところです。

交通事故などの慰謝料に関する基本知識

交通事故実務に携わっている者なら、皆、知っていることですが、被害者が、加害者の加入する損保会社から提示される慰謝料の金額は、裁判所が認定する金額よりも、相当に下回っているのが通例です。

そのため、昔から、死亡や重度後遺障害の案件では、弁護士に頼んだ方が、慰謝料だけでも損保の提示額よりも、遥かに高額な賠償金が得られると言われてきました。

裏を返せば、業界内では、「慰謝料を裁判基準に引き上げることだけしかできないような弁護士にはなるな」と言われたりもしたものです。

このことは、業界外の方には今もあまり知られていないようで、少なくとも、私がお会いした被害者の方々に、裁判基準のこと(損保基準との違い)を知っていますかと尋ねても、ほとんどの方が、初めて聞いた話だと返答しています。

もちろん、物損のみの事案であれば、慰謝料は原則として認められませんし、怪我の程度が軽微な事案では、損保基準と裁判基準に大きな違いがなく、弁護士費用保険に加入していなければ、費用倒れのリスクに照らし、弁護士への依頼を断念せざるを得ないこともあると思います。

損保会社でも、裁判基準への対応はまちまちで、割とスムーズに応諾する会社もあれば、自社基準に一切妥協せず、裁判をするほかない会社もあり、事案によって同じ会社でも結果が分かれたりします。

そのような光景は、消費者金融への過払金請求に、近いものがあるようにも感じます。

そもそも、慰謝料に関する「損保基準と裁判基準」という、ダブルスタンダード自体が、グレーゾーン金利(約定の高金利)と利息制限法に基づく引直計算との関係に似ている面があります。

ところで、近時、過払金請求などの債務整理を派手に集客して、急拡大した若い弁護士さん達の事務所が、現在は交通事故の集客に力を入れている光景をよく目にします。

彼らが、どれだけ交通事故事件にノウハウを持っているかは存じませんが、交通事故も債務整理も、当事者や事件に丁寧に向き合えば、細々とした多くの作業、論点がありますので、それらを無視し裁判基準での慰謝料の増額だけで終わらせるような、雑な仕事ぶりにだけはならないで欲しいものです。

まあ、その点は自戒を込めてというべきでしょうが・・

私の場合、東京時代は主に加害者側で、岩手に移転後は、被害者8:加害者2ほどの比率で、多くの案件に携わり、様々な論点や交通事故特有の事務処理などに関する経験を積んできました。

現在も、最新の議論に遅れをとらないよう、判例雑誌のフォローなどは欠かさないようにしているつもりです。

今後も、選ばれる弁護士となるよう研鑽を深めて参りたいと思いますが、利用者の方々も、事案の内容等に応じた適切な弁護士の選択等ができるよう、賢い消費者としての目線を持っていただければと思います。

 

継続的取引の不当停止を理由とする賠償請求の認容判決

中小企業の方々にとって、経営上、依存度の大きい(売上高に占める割合が大きい)発注企業(往々にして自社よりも規模の大きい企業)がある場合には、突然に取引の打ち切りを通告されるような事態が生じることのないよう、様々なご苦労をなさっているケースが多いのではないかと思います。

そして、万が一、取引中止を通告された場合、それが契約上の定めや商取引上の信義則に照らし、違法不当と言える場合には、取引中止を通告してきた取引先に対し、通告の撤回やそれが適わぬ場合には損害賠償を求めたいということになるでしょうし、そのような紛争は、決して少なくはありません。

ただ、取引基本契約書のように継続的取引を明確に定めた書面を交わすことなく、依存度(中止リスク)の高い継続的取引を行っている企業も多いと思われます。

このような紛争を「継続的取引の不当停止を理由とする賠償請求」などと読んでいますが、往々にして、立証上のリスクも含め、勝敗の見通しを立てることが容易でないことも珍しくありません。

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数年前、小規模な企業の経営者の方から、そのような事案のご相談を受け、事案の内容に照らし、提訴してよいのではと申し上げていたものの、ご本人も悩んだ末に提訴(賠償請求)に踏み切ったという案件を受任していました。

そして、今年の夏に、当方の請求を概ね全面的に認める趣旨の判決をいただき、無事に確定して、相手方企業から支払を受けることができました。

詳細は差し控えますが、そのケースは、売上の100%を依存している発注元の大企業から、正当な理由がないのに突然の停止通告等をされて事業そのものが停止に追い込まれたという案件で、停止の不当性は明らかであったものの、継続的取引を行う契約関係があったとの認定が得られるか見通しが立てにくい案件でした。

なお、継続的取引としての要保護性が認められずに単発的な取引に過ぎないと言われてしまうと、理不尽な理由で今後は発注しないと言われても、賠償請求が当然に認められるとは言い難いと思われます。

また、この種の訴訟では、当該取引が継続していれば得られたであろう1ヶ月間の相当な逸失利益を算定して、それに相当な期間(取引継続が期待できた期間)を乗じて算出するのですが、本件では、同種訴訟の中では、比較的、長めと言える期間が認められてました。

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当事務所にとって「地域内の中小・零細企業が東京などの強大な取引先企業から理不尽な仕打ちを受けた場合に泣き寝入りをしないための闘いをサポートする仕事」は、特に力を入れて取り組んでいる分野です。

そのため、私自身としては、「勝って(お役に立てて)ホッとした」というのが正直なところです。

この種の案件は、事実の立証のほか、裁判官の個性などでも勝敗が分かれるリスクがあるため、悩ましい面は色々とあるのですが、その種の問題が生じた場合やそのリスクがある取引をなさる場合などでは、弁護士への早期の相談を念頭に入れておいていただければ幸いです。

里山資本主義と町弁デフレの行方

藻谷浩介ほか「里山資本主義」を読みました。
http://www.kadokawa.co.jp/product/321208000067/

NHK広島取材班との共著なので、中国山地で自然エネルギーや新型建材を通じた林業の復権、耕作放棄地などを活用した高品質の食品産業や里山の資源を活かした過疎地での地域コミュニティの再生の取り組みなどが取材班から紹介され、それらの営みが近未来の日本社会を支えていく姿を、藻谷氏が「デフレの正体」のような歯切れの良さで論じています。

中国山地なので東北の人間には馴染みにくい例のように感じがちですが「標高数百メートルのモコモコした山がどこまでの連なり、小さな谷が複雑に入り組む、雪は降るが豪雪地帯ではなく緩傾斜地が多い。よく言えば玄人好み、ありていに言えば地味すぎて、体験型観光などの新たな観光産業も、多くの場合根付いていない」(123~127頁)という意味では、東北も北上高地をはじめ中国山地とよく似た地域が非常に多くあります。

そうした点では、東北の人々にとって、学ぶところの多い一冊というべきかもしれません。

地方に生きる弁護士としては、「里山資本主義」を実践し、個の知恵と力を活かして地域内で新たな営みをする方が増えることで、必然的に、関係者の利害を法的に調整する必要のある場面が生じてきますので、そのときにお役に立てるようにしておきたいものです。

とりわけ、新たな取り組みであればこそ、従来の実務では見られなかった新たな法的問題が生じてくる可能性がありますので、そうした場面で必要とされるよう、何らかの形で、地域内の「里山資本主義」の営みに、弁護士として接点を持っておければと思っています。

例えば、岩手会の公害環境委員会が、その受け皿として活用できればとは思いますが、原発被害対策がお役御免になったこともあり、また休眠状態に逆戻りしそうな状況です。

10年近く前に日弁連の公害環境委員会に出席した際、「里山を保護せよ」といった活動に関する報告を耳にすることがあったのですが、最近は脱原発などに重心が移っているせいか、里山の話に接する機会もなく、どうしたものやらです。

余談ながら、「日本でデフレと言われているものの正体は、主たる顧客層が減りゆく商品の供給過剰を企業が止められないことによって生じた、ミクロ経済学上の値崩れである」という下り(270頁)については、債務整理や企業倒産など近年の「主たる顧客層」が急減し、これに代わる採算の合う仕事も伸びないのに、人(供給)ばかり増やし続ける町弁業界にとっては、色々と考えずにはいられないものがあります。

尤も、町弁業界の場合、全国で広がる「相談料無料キャンペーン」を別とすれば、値引き競争をしているというより、事務所経営を維持できるだけの採算の合う仕事が激減し、新規受注する仕事の多くが採算割れリスクの高いものばかりという話が多いのかもしれません。

このような話は、数年前の公共工事激減による建設業界の大量倒産時代に多くの業者さんから「倒産に至る経緯」としてよく聞かされた話です。

ともあれ、藻谷氏によれば、デフレ(成熟分野の供給過剰による値崩れ)を解決し企業が生き残るには、需給バランスがまだ崩れていない、コストを価格転嫁できる分野を開拓してシフトしていくことでしか図れないとのことですが、町弁業界はコストを価格転嫁できない仕事を相当程度、避けて通ることができない業界であり「需給バランスが崩れておらず、かつ、採算の合う類型の仕事」を新規開拓せよと言われても、なかなか思いつくものではありません。

少なくとも、震災関連で被災県に新たに生じてきた業務(地元の弁護士に配点される仕事)については、地域固有という意味では、里山資本主義的な感じがしないこともありませんが、採算性という点では、今も総崩れと言っても過言ではない状態が続いているように見えます。

結局のところ、自己の付加価値(能力や信用)を高め、「単価の大きい仕事を任せたいと顧客層に信頼される力」を養うほかないのかもしれませんが、当面は、暗中模索の状態が続きそうです。

盛岡城の遺構と中央大学

10月に、盛岡城の建物の一部(勘定所など)を廃城時に買い取り、移築等した建物を今も保存、使用されている企業(徳清倉庫さん)が、震災で破損した建物の修復を完了した、という記事が盛岡タイムズに掲載されていました。 http://www.morioka-times.com/news/2013/1310/10/13101001.htm

ここで紹介されている佐藤社長さんは中央大のOBで、私も白門会岩手支部などでお世話になっています。

盛岡城は現在は石垣しか残っておらず、往時をしのばせる建物をこのような形で守っていることは意義が大きいことだと思いますし、記事にも「市民の企画に応えることは可能」とありましたので、このような営みがもっと知られたり、それを適切に活かすことができる方がおられればと思い、勝手にご紹介させていただいた次第です。

余談ながら、白門会岩手支部では、年1回、講演会兼交流会をやっており、今年は前学長の永井先生の講演でしたが、可能であれば、徳清倉庫さんで、一般参加も可能な見学会兼プチ講演会的なものをやっていただき、それからバスで懇親会場に移動する、といったこともご検討いただければと思ったりもします。

見学は随時対応可とのことですが、現に仕事で使われている建物でもあり、一般人が気軽に立ち寄るのは気が引けますので、そのような企画があれば、ぜひ参加したいと思っています。

私の実家にも、徳清倉庫さんとは比較の対象にはなりませんが、それなりに古くて立派な蔵があり、大戦末期に軍?の命令で墨塗りさせられたものの、数年前、純白の壁に塗り替えてもらったことがあります。この修復の記事を拝見しながら、そのことも思い出されました。

岩手県における交通事故の多発地帯

他の弁護士の方のブログで知ったのですが、日本損害保険協会では、都道府県別に交通事故多発交差点マップというものを作成しているそうです。

これによれば、岩手県の場合、1位と3位が奥州市(水沢区と江刺区)、2位が一関市、4位と5位が盛岡市にある交差点となっています。 http://www.sonpo.or.jp/protection/kousaten/kousatenmap24/03/index.html

実際、これまで県内の様々な交通事故のご相談等を受けてきた身の感覚で申せば、盛岡圏に負けず劣らず、県南(特に旧伊達藩域)で生じた事故を担当させていただく機会が多かったような気もします。

反面、盛岡以北で起きた事故のご相談等を受けた記憶は、これらに比べてかなり少ないとの記憶です。

車社会がより進んでいることによるのか、他の因子も影響しているのか、単なる巡り合わせか、その点はよく分かりません。

ともあれ、弁護士費用保険をご利用いただければ、県南の方に関する事故でも、費用負担のほとんどない形で、当事務所に事件対応をご依頼いただくことが可能になっています。

当職は、被害者側・加害者側双方で多数の交通事故事件を取り扱った経験・実績がありますので、県央部の方々に限らず、他の地域の方々も、ぜひご利用いただければと思っています。

旧HPの日記(ブログ)の再掲について

本年10月に旧HPから現HPに変更しましたが、これに伴い、旧HPで平成17年から延々と投稿し続けていた「日記」が、閲覧不能の状態になってしまいました。

駄文の類も多いので、どうということはないかもしれませんが、当業界に関するものとしてお役に立てそうな情報や、そのまま埋もれさせてしまうのは勿体ない小話なども幾つかあり、また、年末に掲載していた年次業務報告のように、当事務所として、ぜひ再掲したいものもあります。

事務局長(HP管理者)の方で再掲の方法を検討したようですが、今しばらく時間を要することや、現HPの方が見やすいなどの事情もあるため、折を見て、旧HPの日記の幾つかについて、再投稿の形で当HPに掲載させていこうと考えています。