北奥法律事務所

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ブログ

鎌倉長谷寺にて、カトリック的仏教とプロテスタント的仏教の歴史と異同に思いを馳せる

鎌倉編のおまけに、長谷寺に赴いた際に考えたことについて書きます。

鎌倉長谷寺は紫陽花の名所として有名であり、どうして文化財指定を受けていないのだろうと感じる、巨大な十一面観音像が本尊となっています。

御仏も鎌倉殿に馳せ参じ
競えど殺さぬ世を導けり

長谷寺の創建時期は不明(伝承では天平期)ですが、一般的理解では鎌倉期から幕府関係者を中心とする時の権力者・有力者の庇護のもとで発展した寺院であり、奈良・平安仏教などと共に、広義の「鎮護国家系仏教」と言えるでしょう。

建物や敷地内には多くの日本の寺院と同様に様々な種類の仏像・地蔵像などが多数入り乱れ、いかにも多神教的な印象を受けます。

ただ、有力者の庇護を受けた寺院に様々な「ランキング」化された仏像などが並べられるのは、それが、貴人(支配階級)の序列社会の光景に馴染む面があるからなのかもしれません。

カネ主たる有力者にとっては、色々な仏様から多様な御利益を受けたいとのニーズもさることながら、偉い仏が沢山いて序列化されている光景を眷属(配下・庶民)に見せて「それが当たり前」とすること(権威化)で、自分達=支配階級の序列社会への服属心を高める効果(ひいては自身の安心感)を期待できたでしょうから。

そう考えると、仏達の序列社会的な表現を伴う鎮護国家系仏教はカトリックに、阿弥陀仏とか妙法蓮華経など特定の如来等を唯一神化する一向宗や日蓮宗などは、プロテスタントに似ているように感じます。

日本のキリシタンも、渡来したのはカトリックですが、この文脈からは、プロテスタント的なものと位置づけられるでしょう。

一向宗などの「プロテスタント的仏教」は一神教的で拝む対象も限られ、排他的傾向がある(あった)のに対し、それ以外(以前)の「カトリック的仏教」の方が多様で寛容な傾向があるようにも感じますが、それは、既存の権威秩序を尊重することが条件である(そのような意味で保守的である)と言えるのかもしれません。

だからこそ、プロテスタント的仏教には、既存秩序を転覆する革命志向的な側面があり、それが一向一揆や同時期の法華宗、キリシタンの弾圧は、弾圧側の担い手たる武家勢力が基本的には旧教(カトリック的仏教)の庇護者であることに照らしても、日本版の宗教戦争にあたるようにも思われます。

日本では新教側が米国のような独立国を作ることはできず、武力闘争としては旧教側が勝利したものの、旧教側も比叡山焼討をはじめ固有武力や政治への制度的な影響力を失い、幕府に庇護された一定の利権を別とすれば、政教分離に近い光景が出現しました。

新教側も、あたかも敗戦後の日本のように、武力(主権)放棄と引き替えに宗教活動の自由を得て、江戸期には戦国期以上に発展したと言えるでしょう。

それらの光景は、基本的にカトリック国であるものの革命時に政教分離が極端に進んだフランスに、似ているようにも見えます(当時、暴力的な教会弾圧もあったのだそうで、宗教利権への反発を含んだ日本の廃仏毀釈や中国の文革に近い面があるかもしれません)。

他方で、かつてプロテスタント的仏教の人々が抱いたであろう「革命の夢」は、我が国では地下深く(人々の抑圧された深層)に眠り、ごく稀に、例えば、オウム真理教のような形で露出することになったのかもしれませんが。

現代日本人が仏像群を拝見しながら宗教心をかき立てることは難しいかとは思いますが、こうした形で社会のありようを考える機会として活かしていただければと思います。

マチ弁が鎌倉来たりてエセ歌人(後編)

昨年末の鎌倉来訪に関する記事の後編です。

源氏山を東側から下山し、寿福寺に立ち寄った後、しばらく南下して鶴岡八幡宮に着きました。

鶴岡八幡宮は今回の主要目的地ということで、宝物殿を含め、可能な範囲で神社内を色々と拝見しました(が、話題の大河館は2時間待ちで諦め、国宝館は休館中で残念でした)。

鎌倉の象徴であり武家の守り神とも称されるこの神社は、源頼義により創建され頼朝の手で現在の姿となったもので、蝦夷の末裔たる東北人にとって仇敵の神殿という面があることも、忘れてはいけません。

と同時に、源氏(河内源氏)宗家はこの地で無惨な最期を迎えたわけで、そのこともまた、この神社の業の深さを感じさせるものと言えます。

ともあれ、千年前に時代に翻弄された人々の鎮魂を祈って一句

しめなわに禍福あざなす鶴ヶ岡

また、源実朝が落命した八幡宮の階段にて、山形県鶴岡市で先日生じた雪害事故も脳裏をよぎって一句。

この坂はまさかの雪が仇となり


その後、私にとっては今回の主要目的地にあたる「頼朝と義時の墓所」(法華堂跡)に行きました。

事前に勉強せず行きましたので、最初に上った頼朝の墓の区画に義時の墓もあるのかと右往左往しましたが、ほどなく、双方は別の場所に設けられており、それぞれ別の階段から上る必要があることが分かりました。

鬱蒼とした頼朝の墓(江戸期に整備されたもの)に比べて義時の墓所(跡地)の方が広々としており、また、頼朝は狭い区画に一人だけの墓となっているのに対し、義時の墓所の奥は三浦一族の供養墓があり、区画上部にも大江広元らの供養墓があるなど様々な施設で賑わっており、ここでも「頼朝のドス黒い孤独」を感じざるをえませんでした。

ともあれ、大河ドラマの様々な場面を思いつつ、鎮魂の丘にて義時が義和に囁く一句

その時は義を以て為し報い待て

***

その後、丘を下りて、鎌倉幕府の終焉の地に向かいました。

北条氏の天下は頼朝の死と義時の権力闘争(勝利)から始まり、東勝寺での高時一族の自刃にて終わる。もって盛者必衰の理をあらはす。

近時の研究(中公新書・亀田俊和「観応の擾乱」など)によれば、鎌倉幕府の倒壊(主要武士群からの支持喪失)は、土地利権をはじめとする武士同士の紛争を解決する役割(訴訟処理機能)を幕府=鎌倉政権が果たしていない(ので政権担当能力がない)と評価された点が大きかったのだそうです。

翻って現代はどうか。

この仕事をしていると、現在の司法制度の残念な部分を否応なしに感じさせられ、当事者の不満や失望を垣間見ることは多々あります。

高時の自刃跡とされる光景は、或いは、裁判所や司法関係者、ひいては立法のための努力をしない国民全体の近未来の姿なのかもしれません。

***

最後に鶴岡八幡宮の小町通り商店街に戻り、通り奥のカフェ・ミルクホールにて名物のプリンを頂戴しながら一服した後、ほどなく帰宅しました。

商店街には「神社のあとはジンジャーで」なるキャッチコピーを付した幟があり、どうせなら、寅さんの口上のように、こんな感じで言葉を並べた方が面白いと思いました。

神社のあとはジンジャーで
お寺で御法度ジントニック
天ぷらアタればテンプルへ
モスクで食べたやモクズガニ

そしてプリンはプリンシプル。

24年前、私が所属していた司法修習52期6組では、地元ご出身のTさんによる「魅惑の日帰り鎌倉ツアー」が開催されました。

Tさんは、数年前から研修所の刑事弁護教官として熱血指導に邁進されつつ、オウム真理教の末端著名信者を巡る刑事事件で無罪判決(実行者との共謀関係を否定)を勝ち取るなどの輝かしい活躍をなさっています。

かたや、当方は今や田舎の片隅で数多の名も無い赤字仕事に追われつつ事務所の運転資金に喘ぐ日々。まさに日暮れて道遠しというほかありません。

湘南の海が眩しく見えるのは、或いは、誰もが可能性に満ちあふれていたのかもしれない、あの日々への執着への裏返しなのかもしれません。

あたかも、この街がかつて武士の都であったように。

皆さんは鎌倉で、何を感じましたか?

ブログでは割愛した写真をご希望の方はFBへどうぞ。

マチ弁が鎌倉来たりてエセ歌人(前編)

昨年末の話で恐縮ですが、大河ドラマで注目された鎌倉に帰省先から日帰りで行ってきました。

9時半頃に稲村ヶ崎の駐車場でパークアンドライドを利用し、最初に長谷駅で下車→鎌倉大仏と長谷寺(鎌倉長谷寺)に行きました。

私は司法修習生だった平成10年の夏に鎌倉に日帰り観光をしたことがあり、それ以来、24年ぶりに鎌倉大仏に来ましたが、街の雰囲気も含め、当時とあまり変化がなく古い街並みが保全されている様子に感心しました。

長谷寺は初めて来ましたが、多数の立派な仏像などを拝見しながら、仏教とキリスト教の異同などをあれこれ考えたので、この点は次回のブログに載せます。

その後、鎌倉駅に移動し、同行者の強い希望で西側の銭洗弁天に向かいました。駅から歩いて行ける距離ですが、相応に長い上り坂となっているため、運動不足で根性のない同行者は「タクシーで行きたかった」と不満顔を浮かべていました。

銭洗う前に銭取る弁財天
急坂で銭より手汗を洗う人
この道が嫌なら麓で芋洗え

その後、坂を上って源氏山公園に向かいました。

鎌倉の頂点たる源氏山公園の山頂には、鎌倉の創設者というべき源頼朝像が鎮座しています。

多くの武士達の力添えで偉業を成し遂げたにもかかわらず、ここには彼一人の銅像しかなく、その上、当時を偲ばせる構造物は何一つないため、かえって寒々しく、頼朝の悲哀を強調するような空間になっています。

引き替えに たったひとりの玉座かな
上に立つ者の孤独はドス黒く


源氏山の頼朝像は何年も前から一度は来てみたい場所でしたが、実際に来てみると、その空間ならではのものを感じることができるような気がします。

昨年の大河は北条家のホームドラマ(家族の物語)とも称されますが、その一方で、身内同士で疑い、憎み、殺し合い、そして血族が誰もいなくなった、頼朝すなわち河内源氏宗家の悲惨な家族の物語であることにも目を向けるべきかもしれません。

その後、源氏山を下山して鶴岡八幡宮に向かいました。

途中、実朝と政子が眠る、源氏山の麓の寿福寺に立ち寄り、修善寺の頼家にも思いを馳せつつ一首。

さむらいの魂喰らいて実る世に 寄る辺なき身の家いずこにか

以下、次回の後編に続きます。

今年の石割桜と、あの日の花びらを偲んで

全国の盛岡地裁ファンの皆様へお届けする、今週月曜の石割桜です。

昔は、遠方からの相手方代理人に「今日が期日で良かったですね」とお伝えするのがささやかな楽しみでしたが、今年はそのような機会がなく、この日は刑事事件の判決言渡でした。

今週、司法研修所の同級生だった方のFB投稿などを通じて、同級生の方がお二人、亡くなられたとのお知らせに接しました。

遠方のご葬儀などに伺うことはできませんが、この桜の散りゆく花びらを、ご冥福のお祈りと共に捧げたいと思います。

これをFBに投稿した日は雨天でしたが、他の方から、散った花びらが雨で裏側の岩に付着し風情があったとのコメントをいただきました。

ぜひ、次の一句を添えていただければと思いました。

散りてなお桜を偲ぶ巖かな

自転車のヘルメット未着用に伴う過失相殺の相場観と各人の役割

本日のモーニングショーで、自転車のヘルメット着用の努力義務化が取り上げられており、交通事故に詳しいという弁護士さんの「過失相殺の可能性あり、最大で2割」とのフリップが表示され、玉川さんがそれに同調する形で、ヘルメットは義務化すべきだ!と高らかに仰っていました。

が、膨大な交通事故事案に従事してきた弁護士として、この「弁護士さんのコメント」が一人歩きすることに疑義を感じざるを得ません。

ヘルメットの着用は、要するに、被害者が事故に遭った際に自身に生じる被害を軽減するための措置であり、シートベルト着用に類するものと言えます。

この点、被害者がシートベルト不着用という事案は昔からあり(近時はほとんど聞かなくなりましたが)私が東京時代に経験した例も含め、多くの事案では過失割合を1割とし、特殊な事情があれば増減させるのが通例と認識しています(さきほどWeb検索しましたが、他の弁護士さん達も裁判例を引用するなどして同様の認識を示しています)。

シートベルトの着用は道路交通法上の義務であり、上記の議論も、当時から明確に義務化されていた運転席や助手席の不着用を前提とした議論で間違いないはずです。

よって、法律上の義務を遵守していなかった場合でさえ原則1割の過失相殺とされているのに、現時点で努力義務に止まるヘルメット不着用が、それ(1割)を超える過失相殺を裁判所が認めるはずもなく、一般的な自転車でごく通常の走行態様であったのなら、現時点ではゼロ割とする可能性も高いと思います(せいぜい5%ではないか、というのが私の感覚です)。

というわけで、この番組に便乗して加害者損保から過大な割合を主張された被害者の方は、ぜひ当事務所までご相談下さい(笑?)。

また、任意保険の被保険者であれば、2割(最大4割?)程度までなら、過失相殺部分は人身傷害補償保険で大半がカバーされるはずですので、その点もご留意・ご安心下さい。

***

ただ、何年も前から通常とは異なる事故リスクが指摘され現にヘルメット着用が当然視されているツーリング等に用いるスポーツタイプの自転車や、転倒時の被害等が大きくなりやすい電気自動車なら、通常とは異なる防護義務(損害拡大防止義務)が認められるべきとして、1~2割の過失相殺もありうるとは思います。

そもそも、それらの自転車については、現時点で基本的に着用を義務化しても国民から不満の声はあがらないと思いますし。

私は現時点でヘルメット着用の必要性をほとんど感じておらず、少なくとも強制は望ましくないと感じている立場ですが(高齢等になれば必要と感じるのでしょう)、どうしても義務化させたいというのなら、自転車の類型や事故態様・年齢など様々な要素に即して現在の実情(事故リスクや着用の必要性)について実証的な議論を行った上で、国民の判断を求めていただきたいです。

でないと憲法訴訟になるでしょうし、それだけに、権力抑止的なスタンスの?玉川さんが義務ありきと声高に仰るのには少し残念な感じもします。

というわけで、法律が絡む話題を取り上げるときは、さりげなくでも構いませんので実情に即した丁寧な説明をしていただきたいなぁと思いますし、こうした番組展開を見ていると、「ジャニーズ会見の件をワイドショーが無視するのは間違いじゃないか(そちら=性被害問題を真剣に取り上げるべきでは)」という2nnの記事に共感せざるを得ないと思ってしまいます。

***

以上の内容をFBで投稿したところ、他の方から「自転車の運転を免許制にして欲しい、危険運転を処罰して欲しい」とのコメントをいただきました。

自転車一律の免許制は難しいと思いますが、走行態様規制などに関しては、処罰云々はさておき、県や市で地域ごとのルールを条例で決めることが、ある程度、自由にできてよいのではと思われます。

有志の皆さんで議論いただき、今度の県市双方の首長選や県市議選などで候補者の方々に働きかけていただければ幸いです。

帰ってきた宮古の法律相談と早春のエセ歌人

今年から宮古市役所の無料法律相談の担当(の一人)になり、先日の木曜が初日でした。

盛岡の河川敷などが満開近くになったので、宮古はすでにピークを過ぎたのかと思いきや、メインの長沢川堤は大半が蕾状態で、満開まであと10日は要しそうでした。

念のため浄土ヶ浜の近くまで赴いたところ、そこそこ桜が咲いていたのがせめてもの救いでした。

帰路は雨天でしたが、岩手に限らず、この国では、それまで晴天続き(で花粉地獄)だったのが、桜が咲き出した途端に曇天や悪天候になることが多いような気がします(翌日の盛岡はその最たるものでした)。

或いは、他の山川草木が、桜に嫉妬しているのかもしれません。

花咲くと空に雲湧き乱るるは 我も愛でよと雨風の声

震災後、数年前まで何度も赴き、毎回ガラガラで内職ばかりしていた県庁(宮古振興局)震災相談と異なり、市役所は満員御礼(予約)になっていました。

当時、何人かの方に、市役所への「満員後はこっちに廻して要請」をはじめ、宣伝努力をしないと制度の意味がないじゃないかとお伝えしたことがありますが、宮古の先生の1人からレスポンスがあっただけで、ほとんど善処が得られなかったことを懐かしく思いました。

長沢川堤の入口の道路では、接触事故を起こした車両同士が離れた位置で互いに誰かに電話をしており、ほどなくパトカーが到着していました。

市役所では受任相当の案件がなかったので(無料相談あるある)、この方々に名刺を渡して「じゃんけんで勝った方(或いは、被害者かつ弁護士費用特約に加入している方)が依頼して下さいね」と営業活動したい衝動に少しだけかられましたが、遺憾ながら自粛しました。

ガーシー議員問題で関係者に責任を取らせたい人が希望する法律案について、憲法適合性を論ぜよ

NHK党のガーシー議員問題については、いよいよ参議院で謝罪文読み上げ等を求める懲罰決議がされ、恐らくは不履行→除名決議という展開が濃厚になっています。
ガーシー議員の処分 3番目に重い「議場での陳謝」で決定 参院 | NHK | 参院選

この問題を巡っては「除名だけでは不十分だ、歳費を返納等させるべきだ」「NHK党や、投票した者の責任も問われるべきだ」という声がマスコミやWeb上を賑わせていますが、「ここまでやれば再発防止に繋がるのでは」と思わせるような具体的な提案(制裁案?)は拝見していません。

私は、こんな議員が誕生すること自体、国会(立法府)の様々な機能不全や政治不信が底流にあり、その解決(究極的には政治部門の憲法改正等?)こそが必要ではと思っているので、モンダイ議員個人の制裁にはさほど関心がないというのが正直なところです。

ただ、徹底した責任追及を求めるのであれば、どのような制度が考えうるのか・憲法上どこまで許されるか、という思考実験自体は関心が湧いたので、半ば戯言感覚で、次のような法律案?を考えてみました。

どうせなら、どこかのホンモノの政党で、真面目に検討いただいても良いかもしれません。

それ以前に、この御仁への投票のような「あらぬ方向」に陥らぬよう、真っ当な方法で庶民の政治不信を受け止め政治作用や諸制度の改善に活かしていく営みが、政治家にも国民にも求められているとは思いますが・・

【次年度司法試験・憲法予想問題集より】

国会への欠席を続けるG議員問題に対する国民の非難を受けて、国会に以下の内容を含む法律案が提出され、可決の見込みとなっている。以下の法律案に関する憲法上の問題について論じなさい。

(1) 各議院は、懲罰の対象となった議員を除名(憲法58条2項)する際、併せて、過去に支給した歳費の全部又は一部の返納を求めると共に、相当額の過料(秩序罰)の支払を命ずることができる。これらの金員には年利14.6%の延滞税を付すものとする。

(2) 対象議員が比例代表制により選出されているときは、前項の決議の際に、前項の支払を担保するため、選挙実施時の対象議員の所属政党及び選挙時の党代表者個人にも連帯支払責任を課すことができる。この場合、その履行がなければ今後の政党交付金から相殺できるものとする。

(3) 前項(比例代表)の場合には、各議院は第1項の決議にあたり、除名後に所属政党から繰上当選するのは不可とし、次回選挙まで欠員を続けるものとすることができる。

(4) 対象議員が除名決議に先立ち議員辞職した場合において、その議員が本条に定める処分を免れる目的で不相当な時期に辞職したと認めたときは、各議院は、対象議員及び政党などに対し、除名決議と同じ要件で本条に定めるものと同様の措置を講ずることができる。

(5) 各議院は、第1項の決議にあたり、選挙管理委員会に対し、対象議員を選出した選挙に関する各投票所での当該議員(選挙区)又は当該政党(比例代表)の得票率を公表すると共に、国に対し、特に得票率の高い地域には地方交付金の配分を減少させるなど、当該地域への施策に一定の考慮を行うよう求めることができる。

なお、本項については、附帯決議に「除名対象になることが当初から見込まれる候補者について投票した者の責任も問うべきだとの国民の強い声が寄せられたこと、他方、投票者を調査・特定し個人に不利益を課す制度が憲法では認められないことも踏まえ、許容される限界的な制度として、得票率の多い地域への一定の不利益措置を講ずるのが相当と判断したことに基づく」と記載されている。

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参考答案は、オボ塾刊行の「受験虚報」次回号に掲載予定・・・かも。

 

管財人口座を巡る膨大な資源と手間の無駄遣いの改善を求めて

前回、破産に伴う管財事件とりわけ個人を対象に短期間での終了を予定している少額管財事件について書きましたが、少額管財に関しては、長年に亘り実務で非常に残念な慣行(決まり)があります。

管財事件では、破産者の換価対象財産が、破産者から切り離され「破産財団」なる法人を構成するものとされており、破産財団に属する財産を管理・換価(現金集約)するため管財人が銀行口座を開設すべきものとされています。

これは少額管財でも代わりがないのですが、多数・多様な財産の管理換価が伴う企業管財(通常管財)と異なり、個人の免責調査とか所定の財産の自由財産拡張(非換価処理)の手続のみを目的とした少額管財では、商品や売掛金のような破産者の財産を処分・回収して専用口座に入金させる手続がありません。

そのため、管財人報酬として予定された予納金(20万円前後)の入金と報酬決定後の払戻という「たった2行の取引」のためだけに、毎回、銀行口座を開設しては解約するという作業が繰り返されることになります。

管財事件は、Web上でも確認できる統計データでは毎年三千件ほどですので、概算で年間二千件以上の「2行の履歴のためだけの通帳」が生じては消えていく光景が繰り返されていることになります。

私は、10年以上前は少額管財事件(通常管財も)を多数受任していましたが、予納金の入出金だけで通帳廃棄を繰り返すのが資源の無駄として余りに酷いと嫌気がさし、5~10年ほど前、裁判所に

「①少額管財は通常の預かり金口座で予納金を受け入れて良いのでは、②少額管財事件だけでも、使い回し可能な管財人口座(破産者名義を付さないもの?)を開設して再利用したい、③せめて通帳発行が不要なWeb口座を開設する方法でもダメか」

と何度か申し入れたことがあります。が、全く相手にされず、最後の照会時に

「仙台高裁にも照会したが、管内に認めた例がなかった」

との理由で却下され、今は4~5年ほど管財事件にご縁がなく、口座開設に関する現在の実情は存じておりません(その照会で裁判所に嫌われたのか、若手激増の影響か、他の理由で切られたのか、あまりにも管財事件が減ったのか、原因は分かりません)。

近年、管財人口座の開設に1万円などの手数料を求める銀行が発生・増加しているのだそうで、弁護士向けのFBグループ内で、不満等が述べられているのを見たことがあります。

私自身は、銀行側のニーズとして、口座開設の有料化自体は(上記のような資源と労力の浪費が繰り返されてきたことに照らしても)相応の理由があるのだろうと思っており、それだけに、これを機に、全国の同業の方々が口座開設等を巡る業務の合理化・無用な手間や経費の節減について裁判所に働きかけていただければと思っています。

先日、少し手が空いた際に上記の内容をそのFBグループに書いて投稿したところ、東京地裁では、③=web通帳が認められているとのコメントを頂戴しました。

そこで、折角なのでと思って、盛岡地裁の担当書記官に問い合わせたところ、盛岡は今も紙のみ(Web口座は不可)とのことで、東京を見習えないか、内部で検討いただきたいとお伝えしました。

また、某県の先生からは、次のようなコメントもいただきました。

「自分は②=破産者名義を付さない『管財人○○』名義の通帳を開設し、事件ごとに入金・払戻を繰り返している。裁判所に事前照会=公式見解を求めれば、どうせ不可だと言われると思い、何も聞かず敢えてそのようにした。(管財実務の通例で)通帳のコピーを提出した際も裁判所からクレームは受けておらず、黙認されていると認識している。なお、その県の個人再生の実務(再生委員)ではそのような扱いが問題なく認められており、それとの均衡に照らしても、②の方法が認められるべきだ」

①=通常預かり金口座での受け入れについては、冒頭に記載した「破産財団は独自の法人格があるので予納金は独立口座で受け入れるべきだ」との理由から、その先生を含め、実務では困難だろうとコメントされている方が多くありました。

私は、それ(財団帰属財産を当然に管財人個人の資産に混入させられない)を前提とするにせよ、少なくとも、管財人報酬以外に財団形成の見込みがない事案(少額管財など)では、口座開設を不可欠とする必要はなく、「破産財団が、管財人個人に対し、予納金を預けている」ものとして、管財人の預かり金口座で受領し管理することを認めること=①の方法も可能(法人格が別だ云々の法律論と両立する)と考えます。

この場合も、報酬決定までは破産財団が管財人個人に対し予納金(預託金)の返還請求権=債権を有していることに代わりませんし、巨額の配当原資ならともかく、短期間で終了する少額管財等の管財人報酬の予定額だけなら、管財人が事前に預かっておくことに問題があるとは思えません(本当に横領等する輩なら、管財人口座だって払い戻すでしょうし・・)。

裁判所自身が、家事事件などで膨大な事件の予納金(相続財産管理人の報酬予定額など)を自ら受領し管理しているのに、弁護士には罷りならんというのも違和感があります。

今流行りの「生産性」の見地からも、最も簡便であり、資源・労力いずれの無駄のない、①=通常預かり金の受入が望ましいはずです。

口座有料化の動きを機に、これまでの資源や労力の無駄遣いを直視し反省して、無用な口座開設をさせない(弊害防止の措置を講じた上で簡略に済ませる)方向で、議論が進むことを願っています。

破産管財を巡る都会と岩手の落差と債務整理に関する地方搾取?の光景

先日、弁護士向けの情報交換用FBグループ内で、東京で執務する先生が「岩手では免責調査型の少額管財が原則10万円と聞いて驚いた。この金額ではやっていけない」とコメントされており、東京?の弁護士さん達が、次々と「安すぎる」と声をあげていたのを拝見しました。

前提知識を補足しておくと、少額管財とは自己破産(破産手続)のうち、裁判所が破産管財人の選任が必要だと判断したもの=管財事件の一類型で、企業倒産(通常管財)ほど管財人の作業が重く(多く)はないため通常管財よりも少額の費用(管財人報酬。申立債務者が事前に調達する必要あり)で実施することが予定されている手続です。

免責調査型の少額管財は、破産者(申立債務者)に何らかの免責不許可事由(浪費など)が認められるものの裁判所の裁量で免責相当と判断される見込みが高い場合に、浪費の再発防止や生活の改善などを管財人が調査し裁判所に報告することを目的として運用されています。

東京地裁などでは、少額管財の予納金(事前準備額)は20万円を原則としており、冒頭の先生は東京を本拠とする弁護士法人の経営者で、岩手にも支店があり、裁判所から「10万円で管財人を引き受けて欲しい」と言われたので、それに対する不満を述べたもののようです。

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しかし、貧乏県こと岩手で法テラス案件(所得・資産の少ない方の破産事案)ばかり受任している申立代理人の立場からは、10万円の捻出すら困難な方が多いのが実情で、20万円と裁判所から言われた場合でも、本人の事情をあれこれ述べて10万円に止めて貰うことも珍しくありません。

昔に比べて管財指定される割合が圧倒的に高くなった現在では、指定可能性が高いと思われる案件では、事前に10万円の目処を立てて貰うか、「裁判所は半年以内に予納金を用意しろと言ってくるので、事前に5~6万円は積み立てて下さい。指定されたときは、1ヶ月1万円等のペースで、半年以内に残金を捻出できるよう頑張って下さい」と伝えています。

が、親族援助等のない方は、その準備だけで1年以上を要することも珍しくなく、長期化で代理人側の疲弊も累積するのが現実です。

現在の免責調査型管財人の業務がどの程度なのか存じませんが(ここ何年も裁判所から配点がないので)、10万円で採算がとれる程度の業務を本則とすれば足りるのではと思っています(昔々に配点を受けた際は、下記の事案を除き、10万円で足りる程度の仕事で済んだと記憶しています)。

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債務整理を巡る弁護士の報酬の問題に冠しては、任意整理=リスケジュールを(軽々しく)推奨する東京などのWeb広告弁護士・司法書士が、当事務所の数倍の費用で、実際には督促を止めるだけの作業しかしない光景の方が、遙かに問題だと思っています。

彼らは、(その程度の業務しかしていないという意味で)サービスに比して高額すぎるカネを支払わせた後、債権者との交渉や支払が始まる頃になって、債務者本人から「返済は無理だ」と申告がなされて、弁済すらまともに開始することなく破綻する(もともと無理な計画になっている)例を何度も見てきました。

そして、破産・再生するしかない→高額な委任費用の支払能力ありません→法テラスで地元弁護士=私ほか、というパターンを、5年以上前から何度も拝見しているので、貧乏県の弁護士としては、そちらの方を何とかすべきでは?と日々感じています。

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ただ、それとは別に、私自身も、少額管財人として「10万円じゃ仕事にならないよ」という経験をしたことが無いわけではありません。

10年近く前、免責調査型で管財人の配点を受けた事案で、後日に巨額の返戻金のある生命保険が発覚し、本人や代理人に伝えたところ、「母の名義借りでした」と膨大な資料が提出されたことがありました。

そのため、提出資料や文献を散々検討し名義借り(破産財団不構成=換価しない)を認めるべきとの報告書を提出し、裁判所も認めて不換価で終了したのですが、膨大な労力を費やしたため、10万円では時給換算で余りに不採算でした(このような論点を伴う事件では、予納金は20万円以上とするのが通例と理解しています)。

そこで、裁判所への報告書の末尾に「できれば、(不換価の代償として)本人側から10万円くらいを支払って貰う(事前の10万円と併せて管財人報酬を20万円とする)和解か何かをしたいですぅ~」と泣き言を書いたのですが、裁判官からは無慈悲に無視され、10万円で終わったという経験をしたことがあります。

ですので、そうした事案に限っては、「安すぎる!そんな価格でやってられるか」との声を全国の弁護士さん達から裁判所にお伝えいただければ幸いです。

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冒頭の先生によれば、県内の他の支部から少額管財の打診があったものの、裁判所への往復だけで3時間を要するため、さすがにそれで10万円は採算が合わないと感じた、というもので、その支部の管内の弁護士さん達が断ったので、(遠方にある)その先生の事務所に打診があったとのことでした。

詳細は分かりませんが、申立代理人は、地元の弁護士さんではなく、東京の「債務整理専門」を掲げて大々的に広告する弁護士等で、当事務所の通常価格(岩手の弁護士の相場)よりも遙かに高額な代理人費用を本人に支払わせて申立をしているとのことでした。

そのため、「こちら(管財人)に10万円で大赤字仕事を強いているのだから、代理人報酬に対し否認権を行使して、一部を(代理人弁護士から)取り上げてしまいたい」と息巻いていました。

当事務所は、債務整理のWeb広告等が咲き乱れるようになった10年ほど前から、通常価格での自己破産の依頼が来なくなり、近年の自己破産の受任は法テラス基準内の収入しか存しない方ばかりとなりました。

恐らく、債務整理需用者の大半がWeb広告に誘導され、支払能力のある方は高額な(恐らく東京等の)弁護士等に依頼し、そうでない方は、彼らの「ウチではやらないよ」等を経由して地元弁護士(法テラス、無料相談会等)に流れてくるのかな・・と感じています。

というわけで、高額な受任費用で申し立ててきた代理人には、冒頭の先生のような強者の弁護士さんからゲシゲシ報酬否認をして管財人報酬を稼いでいただくと共に、10万円じゃやりたくないという恵まれた弁護士さんばかりの支部の方々は、書記官に「小保内、管財人やるってよ」とお伝えいただければ、当方にてお引き取りさせていただきます(笑?)。

ちょうど、つい先日も、管内の司法書士・弁護士が全員辞退したという成年後見の関係で、記録閲覧や関係者との協議のため、往復3時間以上をかけて、某市に行ってきたばかりでした、というのが、同業者が逃げた?案件ばかり拾い続けてどうにか生き残ってきた、当方のお恥ずかしい現実です。

ともあれ、隣の芝生ばかり羨んでも仕方ありませんので、まずは手持ちの仕事を地味にこなし続けたいと思います。

 

岩手弁護士会・公害対策環境保全委員会の活動とお願い

私は標記の委員会の委員長を拝命していますが、諸事情で首が廻らず、他の委員も本業で環境問題を本格的に手がける「専門家」の方がいないこともあり、委員会としては、事実上の休眠状態が延々と続いています。

先日、弁護士会の他の委員会から自治体向けの業務提携の広告文案と意見照会が来ましたが、照会の対象文書(チラシ)には、当委員会の取扱分野である、公害対策及び環境保全に関する自治体支援の活動に関する記載が全くなかったので、昼行灯委員会だからそのような扱いを受けるのだろうと残念に思いつつも、次のような内容を加筆いただきたいと要請しました。

【公害対策・環境保全】法律相談業務受託、弁護士推薦、講師派遣など

自治体内で生じた各種の公害・環境問題について、自治体・住民・地元企業など様々な立場で法律相談に対応するほか、法律問題に関する勉強会の講師派遣、各種協議会や第三者委員会などの委員を推薦します。

典型七公害(大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭)に限らず、自然保護・廃棄物・エネルギー(太陽光・風力など)・景観・化学物質等に関する被害などのほか、動物愛護・動物福祉に関する問題(虐待、殺処分、多頭崩壊など)も対象とします。

まあ、当然ながら、その書面を送ったところで直ちにどこかの自治体から当委員会に申出がくるとは言えないでしょうし(それどころか、申入自体、捨て置かれる可能性も十分あるのでしょう)、本気で「自治体連携」をする気があるなら、当委員会として、県庁や県内各自治体或いは各種団体に、独自に書面を作成して送付する程度のことをしなければとは思っています。

他の委員会の取扱は存じませんが、例えば、「講師派遣」の報酬を委員会予算から支出できるのなら、先方の費用負担無しでも対応できるので、勉強会等を希望する自治体などはどうぞ、と言いやすくなるとは思います。

というわけで、他人をアテにすることなく委員会の活性化のために自分から率先して動かねばとは思っているので、そろそろ行動に移すことができればと思います。

この投稿をご覧になった方で、当委員会の支援等を希望される方がおられれば、当方までお声がけいただければ幸いです。