安倍内閣が世論(マスコミ・公明党・野党など)の強い意向に応じ渋々?導入した「1人あたり10万円の給付政策」(特別定額給付金)について、受給した家庭内で世帯主がお金を独り占めするような行動に出るなど、家族間でトラブルが生じている、という報道が出ています。
私は、震災時の相談経験をもとに、10万円政策が採用されたときから、この点を危惧しており、4月21日にfacebook上で以下の投稿をしていました。
その投稿を、微修正の上でそのまま掲載しますので、ご自身のご家庭はもちろん、今後の政策(の支持など)の参考にしていただければ幸いです。
なお、引用したニュースで解説されている弁護士の方は、制度の解釈として「権利(財産)は世帯主に帰属し、構成員(家族)個人が世帯主に引渡請求権を有しない」との考え方を支持(採用)されています。
その当否を今、論じることはできかねますが、このような考え方=世帯主が正当な理由なく独り占め・浪費等しても何も言えないとの考え方が罷り通れば、当然ながら、全国の多くの家庭で不公平を強いられた側による何らかの爆発が生じることになるでしょう(ただでさえ、現下の情勢で高ストレスを感じて、はけ口を求めている方は多いでしょうし)。
そうであればこそ、そのような問題を抱えた(のかもしれない)制度が設計されたことや、そのようなリスクを看過して徒に熱狂?したこと自体、政府であれ国民であれ、反省を要するのではと感じています。
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(以下、4.21のFB投稿)
先日、すったもんだの末に決まった「10万円給付政策」は、報道によれば、世帯主が世帯全員の金額を申請し、しかも、世帯の構成員各人名義の口座に個別に送金するのではなく。世帯主の口座に全額がまとめて送金するのだそうです。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/414095
私は予言します。これにより、全国の膨大な数の家庭で給付金を巡り泥沼の紛争が生じ、潜在的な不和が拡大再生産されると。
岩手の方はご承知のとおり、先の震災では、義援金や支援金などの名目で、被災者・遺族の方々に多額の金員が支給されました。
私は震災直後から長年に亘り、1ヶ月に1回以上の頻度で県内沿岸部(被災地)各地の避難所を巡ったり臨時相談所を担当してきました。
震災から半年~2年頃の時点で私が受けた相談のうち最も多かったのが「義・支援金が、世帯主の口座に送金された後、(世帯主=受領主のキャラ等に問題があるとか従前から様々な形態の不和があるため)独り占めして家族に渡さないので困っている、という類の相談でした。
遊興費などに費消する類の話から、親族構成が複雑で、そもそも当該御仁が代表者として受け取ること自体に問題があると感じるケースが多かったように記憶しています。
ですので、私は「震災でどのような相談が多かったか」と聞かれるたびに、この話を持ち出して、法改正など=個人ベースで受領できるように改正するのが必要だと訴えていますが、岩手弁護士会きっての窓際三下野郎の悲哀のせいか?誰も相手にしていただけず、現在に至っています。
結局、今回もFBの片隅でこのように注意喚起するだけが精一杯ということになりそうですが、潜在リスクに不安を感じる方々は、例えば、送金先通帳を共同で管理するなど、現実的に可能な範囲の方策を講じていただければと思います。
余談ながら、平成28年11月に弁政連岩手支部と岩手県議さん達との懇談会の際にも、この話をしたことがありましたので、ご参考までにブログ記事を紹介します(岩手県議さん達の悪口を言う気はもちろんありませんが、この際も、いつもと同じく皆さんに聞き流されておしまい、というのがお恥ずかしい現実です)。
ちなみに、「一世帯で合計いくら」という、世帯内部で誰にどのような権利(資格)があるのか全く分からなかった義支援金は、分配を巡るルールがないという意味で、争いの種になりやすかったのですが、今回は、個人一人一人に受領する資格があるという形なので、義支援金に比べれば、自分にきちんと分けなさい、と内部で言いやすい(引渡などの請求権が認められやすい)とは思います。
大半の家庭では問題は生じないでしょうから、送金側の手間も考慮し申請・支給の原則は世帯単位でもやむを得ないとは思いますが、会内などでよく指摘されるDV絡みのように、世帯主が全員の利益を代表しているとは言えない事案で弊害が生じないよう、対策を講じるべきです。
例えば、申請にあたっては、受給者全員の署名捺印を原則必要としたり、世帯主に申請を任せられないと思う人は自ら申請して正当な理由があればなるべく簡易な審査で個別受領できるようにするとか、それらの問題がある世帯でなくとも、送金については受給者ごとの個別送金の希望があれば認めるなど、弊害防止等のための例外措置を定めておくべきではと思っています。